おカネで買えないもの

ドナルド・トランプが再び大統領選にもどってくるかもしれない。他メディアですでに記したように、次の大統領選に再出馬する可能性の方が、いまは高いと考えている( トランプ氏が多額の資金調達、大統領選へ準備着々トランプ氏が次の大統領選へ始動)。

ただ取材を続けていく中で、個人的にはトランプという人間を知れば知るほど嫌いになっていく自分がいることに気づく。理由の一つは、カネですべてを解決できると思えるような価値観を抱いているところだ。「カネで買えないものはない」といった考え方を信奉している人間を好きになれるはずもない。

端的に述べるならば、「カネで買えないものはない」と思うことほど浅薄な思想はないと考える。思想と呼んではいけなかった。単なる愚見だろう。というのも、本当に手に入れたいものはカネでは買えないからだ。簡単なことである。ハワイ州を買いたいと思っても安全保障上の理由から購入は無理である。国家間での土地の売買は可能であるが、21世紀になって異国の地を買うことは容易ではない。ハワイのコンドミニアムは買えるし、大金持ちであれば小島を購入することくらいはできるだろうが、ハワイ州そのものを手に入れたいと思っても叶わない。

カネがあっても空を飛ぶことはできない。飛行機やドローンを使ってではない。人間の四肢で大空を翔ることである。人間は地表を走れるし、海や湖で泳ぐことはできるが、空は飛べない。その点でカネは何の役にもたたない。

さらに学歴をカネで買うことはできない。知識や教養も買えない。思いやりや他人への配慮といったものも無理である。そして最も重要な「愛」というものを紙幣で手にいれることはできない。 そうなると、私が本当にほしいものはすべて買えないものと断言してもいいくらいで、安いモノだけがカネで売買されていると思えるほどである。時計やバッグ、車、そして家や土地などは相対的には安い買い物といえるかもしれない。

だからトランプが選挙資金を個人資産から賄い、湯水のように使えば当選を果たせると思わせたくないのである。 「おカネで買えないもの」もあったと悟らせたいのである。(敬称略)