先日、昔からの友人と飲む機会があった。串焼きのコースを頼み、生ビールを飲みながらゆっくりと話をした。彼とは同い年で、互いにマスコミに身を置く身なので、共有できる話が多いだけでなく、価値観が似ているという点でも貴重な友である。
夜もふけてきた頃、私は自身の汚点を曝け出すように「記憶力が衰えてきた」という話を切り出した。最近、とみに力が落ちてきたと述べると、彼は「私なんか10年前からだから」と慰めてくれるようなことを言う。
「名前は思い出せないし、昨日あったことさえも思い出せないことがある」と私を喜ばせるようなことを話す。さらに二人で記憶についての話を続けているうち、私は以前記憶力が落ちてきたという自覚がでてきたとき、記憶について詳しい内科医のもとを訪ねた話をした。
大脳のMRI(核磁気共鳴画像法)を撮ってもらったが、萎縮はなかったし、血管が詰まっているということもなく、医師からは「このお歳ですと、それ相応に忘れやすくなるものです」という慰めの言葉をかけられた。だが、今も本当に大丈夫かどうかの確証はない。こうした心配はこれから深まることはあっても、霧がスッキリ晴れるようになくなることはない。
二人で、「歳をとるということはこうした憂慮がどんどん増えるというだね」という話に落ち着き、その日の飲み会はお開きになった。