急減の理由:新型コロナ(51)

新型コロナウイルスの新規感染者数が気持ちいいくらいに減少し続けている。11月7日発表の全国の新規感染者数は162人。今年8月中旬には1日2万人を超える日もあったので、「この3カ月でいったい何が起きたのか」と多くの方は思っているに違いない。

そうした思いを抱えながら今朝の日本経済新聞を開くと、7面に「コロナ感染、なぜ急減」という特集が組まれていた。解析記事ではなく、4人の専門家が独自の視点から「理由」を述べている。4人というのは舘田一博・東邦大教授、黒木登志夫・東大名誉教授、松浦善治・阪大特任教授、仲田泰祐・東大准教授で、いずれも著名な先生ではあるが、この時期に学究的な証明ができるわけではないので、「自論」として受け止めておかなくてはいけない。

舘田氏は「ワクチンの効果と基本的な感染対策の徹底が非常に強くでたためと考えている」と述べた。これは多くの人が考える理由である。日本人は他国の人よりも行動に統一性があるため、皆がウイルスに注意したという主旨である。さらに「日本は基本的に感染対策が文化として定着している」とも記している。

一方、黒木氏はワクチン接種や人流の抑制などではここまでの減少はなかったのではないかと疑問をつけた。ワクチンは2回接種をしても約2割がブレークスルー感染をするので、「新規感染者は高止まりしたはずだ」と言う。同氏は「仮説だが」と前置きしたうえで、ある遺伝子領域に変異が追加されたことで、感染力が落ちた可能性があると指摘した。

また、松浦氏は学者らしい謙虚さを持ち合わせた方で、冒頭で「新規感染者が日本で急減した理由はわからない」とした上で、患者が減ったのはウイルス側に理由があるかもしれないとの仮説をもちだす。

「新型コロナのデルタ株はあまりに多くの変異を起こし過ぎ、人間に感染した時に増えるのに必要な物質を作らせる遺伝情報が壊れるなどして、自滅しつつあるかもしれない」と説明した。

最後の仲田氏は医学者ではなくマクロ経済学の先生で、「人流とワクチン接種の効果だけで8月後半からの急減は説明しにくい」とした上で、デルタ型の感染力が想定以上に小さかった可能性を指摘している。さらに市民のリスク回避傾向が強まったとすると同時に、120日周期のという波で統計的には今回の減少を説明できるとした。

4氏それぞれが自論を展開しているが、誰が「正解」を述べているかはもう少し時間がかかりそうである。