いまの首相である菅義偉氏の名字は「すが」であるが、2010年に首相になった民主党の菅直人氏は同じ漢字でも「かん」と読ませた。調べると、菅を名字にしている人は全国で約4万人おり、「すが」と「かん」がほぼ半々であるという。
さらに似ているのが、首相になってからの支持率の推移である。
NHKの調査によると、菅直人氏の支持率は首相就任直後には61%だったものが、1年後には25%にまで下落した。菅義偉氏の方は、昨年の政権発足時が62%で、10カ月後となる今年7月には33%にまで落ちている。だが、時事通信の調査ではすでに29%にまで下落しており、今後数カ月で25%の領域にまで落ちる可能性がある。
両首相にかぎらず、これまでのほとんどの首相支持率は政権発足時がもっとも高く、それから徐々に下落している。理由はいくつかあるだろう。ほとんどの首相がテレビカメラの前に出てくる時は自分の言葉ではなく、官僚の書いたペーパーを読んでいることが挙げられる。記者会見ではテレプロンプターを読んでいるし、質問者の質問内容も事前に首相側に伝えられていて、アンチョコを読んで回答している。失敗しないようにという官僚の配慮だろうが、テレビを観ている国民にとっては落胆以外にない。
そんな時、バイデン米大統領のタウンホール会議がCNNで生中継されていた(日本時間22日午前10時)。バイデン氏はアンチョコのペーパーを用意しているわけでも、テレプロンプターを見るわけでもなく(設置せず)、司会者の顔を見ながら終始、自分の言葉で話をしていた。いわゆる生の声を視聴者に伝えたのだ。会場から質問も受けていたが、その質問にも即興でそつなく回答していた。
大国のトップに立つ人間である。これくらいのことは当たり前にこなせなくてはいけないはずだ。政治家というより、日本の官僚が失敗を恐れるあまり「総理、紙を用意しますから、それを見てください」と指示しているのだろうが、それを跳ね返して、笑いを交えながら国民と対話できる首相がでてきてほしいものである。