不自由な特派員

私はいまでも週に何回か、東京丸の内にある日本外国特派員協会のワークルームで原稿を書いている。ここには欧米の記者たちが出入りしており、多くが顔見知りである。

今日(19日)、ヨーロッパからきている特派員と廊下ですれ違ったとき、一昨日に五輪特派員としてロンドンから東京にきたばかりの記者の話をしてくれた。彼はこう言って苦笑いした。

「5月に2週間待機の免除が発表されたから、東京ではすぐに取材ができるはずだったのに、その記者は2週間ホテルから出られないって言うんだ。だからホテルの部屋でテレビカメラを回して中継していた。それだったら、ロンドンにいた方がよかったよ」

五輪が始まってからも自由に取材ができないとなると、東京にきた意味は半減してしまう。半減どころか、会社としても個人としても悔しさと怒りがこみあげてきて、五輪が始まる前から発散できないもやもやを持ち続けなくてはいけないだろう。

そんな時、「ルールを無視して自由に動き回る人がでてくるのではないか」と知人の特派員に訊くと、こう返してきた。

「ジャーナリストなので、行動力のある人が多いけれども、ほとんどの人が組織に所属しており、勝手にルールを破る人はまずいない。ルール違反は会社としても個人としてもマイナスだから」

いまでも五輪中止と申し立てている人たちがいるが、私はここまで来た以上、無観客で、粛々と開催してほしいと思っている。