はりがねで!

いきなり「はりがねで!」では何のことなのか、誰もわからないかと思う。ただラーメン店での会話というと、ピンとくる方がいるのではないだろうか。

今日のランチは何にしようかと繁華街を歩いている時、「博多ラーメン」という看板が目にとまった。久しく博多ラーメンを食べていない。「長浜や」というよく目にする店名もついている。

ガラガラと引き戸をあけた。食券販売機でチケットを買い、カウンターの奥の席に座ると店員さんがすぐに食券をとりにきた。麺の硬さを選べるという。

「硬めでお願いします」

そう言ったあと、厨房の上に貼られている麺の硬さの張り紙が眼にとまる。いちばん硬いのが「こなおとし」で、茹で時間3秒。3秒である。ほとんど生である。

続いて「はりがね」「バリかた」「かため」「ふつう」「やわらかめ」と続いている。私はすぐに厨房の中にいた白いタオルを頭にまいた店員さんに、「茹で時間を変えるのって、まだ間に合いますか」と訊いた。

「大丈夫っすよ」

「それじゃあ、はりがねで」

「ハイッ、はりがね一丁!」

熟考せずに瞬間的に「はりがね」が口から飛び出していた。ちなみに、はりがねの茹で時間は10秒、以下バリかた20秒、かため30秒、ふつう40秒、やわらかめが90秒だった。

そんなに短い時間で大丈夫なのだろうかと思っていると、カウンターのところに博多ラーメンは茹で時間が短いとの説明があった。それにしても3秒とか10秒でいいということは、茹でないでそのままスープに入れてもOKという意味でもある。

「はりがね」が眼の前に置かれるまで時間はかからなかった。せっかく上から2番目を注文したのだ。伸びないうちにはりがねを口に入れないといけない。普段は最初にスープを飲むのだが、すぐに割り箸をわってスルスルとすすった。

かなり硬いが食べられないほどではないし、芯が残っているわけではない。パスタの茹で時間が少ないと中に白い芯が残ることがあるが、最初から芯にあたるものがないのだろうと思う。硬め好きの人にとっては耐え難いほどの心地よさである。口の中に心地よい抵抗感が広がって、、「ンーーーいい!」で一気に食した。

また来てしまいそうである。