大統領の座はカネで買う、余裕のブルームバーグ

「より多くのカネをつぎ込んだ方が勝つ」

米大統領選でよく語られてきた話である。2016年の選挙でドナルド・トランプ氏(以下トランプ)が当選するまでは、この話が30年以上も大統領選で生きてきた。

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候補が集金した資金を比較するだけで、選挙前に当選者が予想できもした。

クリントン、ブッシュ、オバマの各大統領は2度ずつ大統領選で勝ち、いずれもライバル候補より多額の選挙資金を集めた。カネで直接、票が買えるわけではないが、テレビやラジオ、インターネットを使った政治広告は制限がないため(ツイッターの政治広告は2019年11月22日で禁止)、カネをつぎ込むほど多くの票を期待できた。

選挙には莫大な資金が必要になる。大統領選はなおさらだ。

50州で選挙事務所を開設し、運動員を雇用し、プラカードを印刷し、テレビCMを流すといくら資金があっても足りないくらいである(続きは・・・大統領大統領の座はカネで買う)。

早稲田大学オープンカレッジ

昨年4月から続いている講座がある。母校が運営するオープンカレッジの「ワシントンリポート:トランプ政権を取り巻くいまのアメリカ」という講座だ。

上のパネルは今日使用したパワーポイントの表紙である。90分の講座で、私は目一杯しゃべりつづけることにしている。こちらが受講者に質問をしたり、指して何かをさせるということはしない。

そうした時間を取り入れた方が進行は楽になるが、ジャーナリストとしてどれだけ新鮮な話ができるのか、どれだけ深淵な分析を提示できるのかが勝負だと思っているので、敢えてこちらから一方通行の話で通している。

たまに冷や汗をかきながら、時に熱くなりながら、来年もしゃべりつづけようと思っている。

2020年米統領選(22):ブルームバーグ参戦

マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長(77)が米時間24日、正式に出馬を表明した。11月8日の当欄で記したように、同氏の参戦により民主党レースは政策論争という点ではより収斂されていくはずで、有権者にとってはいいことかと思う。

ただブルームバーグが民主党レースで勝者になれるのかという議論になると、難しいと言わざるを得ない。出馬が遅すぎる。本人もわかっているはずだが、本当に勝算があると思っての出馬なのか疑問である。

来年2月3日のアイオワ州党員集会(予備選)を含む最初の4州の予備選には参戦しない。これはある意味で致命的で、他の候補たちが最初の4州に力を注いでいるだけに、春先には大きな差ができてしまう可能性が高い。特にアイオワとニューハンプシャーで好成績を収めることにより、メディアが名前と政策、さらに人物等の情報を拡散してくれる。

ちなみに2月11日に行われるニューハンプシャー州予備選の登録締切は今月15日だったので、ブルームバーグはもう間に合わない。10日ほど前のことである。いま出馬宣言をするのであれば、なぜ1カ月前にしなかったのか。深淵な理由が背後にあるとは思えない。

しかも全米の民主党支持者から熱烈な要請があって出馬したわけではない。最新の世論調査(エマーソン)では出馬宣言前、すでにブルームバーグの名前が「期待の候補」として挙がってはいるが、支持率はたった1%である。

ただ途方もないほどの億万長者(全米ランキング9位。総資産6兆2600億円)なので、ふんだんに選挙資金を使って選挙活動を行うことはできる。過去30年近く大統領選を取材してきて、前回のトランプ勝利まで、「より多くのカネを使った候補が勝つ」という暗黙のルールがあった。それだけ有利に選挙選を戦える利点はある。

しかし出遅れ感は否めない。1500メートル走で、自分だけ1分遅れてからスタートを切ったという印象である。「億万長者のわがまま」で終わらないでほしいが・・・。