トランプの盲目的な支持者たち

いまアメリカではトランプを弾劾訴追して、大統領を辞めさせる動きが加速している。だがそうはなりそうにない。

このブログでも、私が書いた他の原稿でも、そして放送メディアや講演でも、「トランプは下院で弾劾訴追されるが上院の弾劾裁判では無罪になる」と言い続けている。実際にそうなる確率は8割以上だろうと思う。

というのも上下両院の共和党議員が例外なく、盲目的に、狂信的にトランプを信奉し続けているからだ。そこには虚仮の一念(こけのいちねん)という思いが見え隠れする。この言葉は「愚かものが信念を通す」という意味で、議員だけでなく、共和党の人間は真実に目を瞑り、政党政治の呪縛に埋没しているかのようだ。

議員の多くは弁護士資格をもつプロの法律家だが、問題の核心を直視していない。共和党の議員たちは過去1カ月、トランプ擁護の発言に終始してさえいる。

テキサス州の下院議員マイケル・マコールは「トランプとゼレンスキー(ウクライナ大統領)との交換条件なんてものはない」と断言。またオハイオ州下院議員のジム・ジョーダンも「2人の間には何の条件もなかったし、圧力もなかった」とトランプを疑らない。

さらにルイジアナ州上院議員のジョン・ニーリー・ケネディは「私の判断では交換条件というのは他人を惑わすための情報にすぎない」とまで言った。もう一人のオハイオ州下院議員、ブラッド・ウェンストラップは「大統領が他国のリーダーに政治的依頼をすることは適切なことだと思う」と語る始末である。

自分の政党の大将を無条件で守ることは、自分の政治生命を守ることにもつながる。共和党有権者から圧倒的に支持されているトランプを批判していては、次の選挙で自分が落選する可能性があるのだ。

だが、ウクライナ代理大使のビル・テイラーもEU大使のゴードン・ソンドランドもはっきりと交換条件があったと証言している。彼らの言葉にこそ、真実が宿っているように思える。というのも、2人は勇気をだして自分を任命してくれたトランプに逆らう形で証言をしたからだ。

こうなると、法律などというものは自身が信じるものを正当化させるための道具にすぎなくなってしまう。少なくとも、共和党議員はトランプを擁護することに専心するあまり、客観的に真偽を判断する力を失っている。

当件で、私はアメリカの議員に本当に失望した。メディアが吠えても、何も変わらないことも落胆の度合いを深めている。(敬称略)