あの日の思い出

昨日、ニュースサイトのネットサーフィンをしていると、俳優ロバート・レッドフォード(83)についての記事がでていた。

今年、映画『さらば愛しきアウトロー』をもって俳優を引退すると宣言していたが、10月20日から始まった米HBOのドラマ『ウォッチメン』に大統領役として出演していることがわかった。以前、レッドフォードは80歳で引退すると言っていたが、80歳直前の作品に納得がいかず、結局『さらば・・・』までやることになったと述べていた。

そして今、劇場用の映画ではないが俳優を続けており、演じる仕事を断ち切れないのだなあと思う。それは制作サイドからの出演依頼が絶えず来ているということでもあるし、本人も継続したいとの気持ちがあるからなのだろう。

80歳を過ぎて顔には多くの皺が刻まれているが、いまでも男の色気を漂わせ、立っているだけで絵になる数少ない俳優である。

実はレッドフォードには2004年、ニューヨークのホテルのスィートルームでインタビューしたことがある。まだ私がワシントンに住んでいた時のことだ。『モーターサイクル・ダイアリーズ』という映画のエクゼクティブ・プロデューサーだったレッドフォードは、日本のメディアのインタビューにも応えてくれたのだ。

あの時、私にはカメラマンも助手もおらず、1人で乗り込んでいったのを覚えている。レッドフォードの方は数人の取り巻きがいたが、インタビューが始まると部屋からでていったので、数十分間は2人だけで話をした。

私はそれまでに数多くの人にインタビューをして慣れているつもりだったが、レッドフォードという存在に胸が高鳴り、何をどう話したのかよく覚えていない。私にはとにかく『明日に向かって撃て』の『華麗なるギャッツビー』の『追憶』のレッドフォードだったので、目の前にいるだけで夢ごごちだった。

彼はアカデミー賞を2度獲っているが、監督賞と名誉賞であって主演男優賞ではない。どれほど男優賞を欲しかったことか。いま思うとインタビュー時、獲れていない悔しさのようなことを訊きたかったが、訊けなかった。

いまでも演じることにこだわっているのは、その宿望があるからなのか、、とも思っている。