伏兵に嵌ったトランプ大統領弾劾へ

ロシア疑惑を乗り越えたドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)は、まさかウクライナ疑惑で弾劾調査が始まるとは思っていなかっただろう。

弾劾という点では、トランプの周囲にいる複数の関係者が起訴されたロシア疑惑の方が危機感は強かったかもしれないが、ロバート・モラー特別検察官は今春「シロ判定」を下した。

今回、ナンシー・ペロシ下院議長はウクライナ疑惑で、連邦下院の6つの委員会にトランプの弾劾調査を命じた。だが同議長はトランプの弾劾には反対だった人物である。

今年3月の「ワシントンポスト・マガジン」とのインタビューでこう述べている。

「弾劾は国家を分断させます。やむにやまれぬ証拠があったり、圧倒的と言えるような超党派の力で弾劾を推し進められない限り、すべきではないと考えます」(続きは・・・https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57764

トランプ弾劾へ

あれほど「弾劾はすべきではない」と言っていた人が変われば変わるものである。

下院議長ナンシー・ペロシがトランプをホワイトハウスから追いやるために、とうとう腰をあげた。今春まで「弾劾は国家を分裂させるから」と、難色を示していたが、トランプがウクライナ大統領ゼレンスキーに電話で理不尽な要求をしたことで、事態は180度変わった。

私は昨日の午前中まではそれほど重くみていなかったが、今日になって実際にトランプがゼレンスキーに強請した内容が明るみになってきて、一国の大統領が口にすべきものでないことがわかった。あらためてトランプの悪性を目の当たりにし、弾劾にあたいする大統領であるとの結論に達した。

トランプが民主党ジョー・バイデンを何としても蹴落としたいことは子どもでもわかる。だが、それだからと言って、ゼレンスキーを動かしてバイデンに不利になるような状況をつくりだすというのは大統領のすることではない。

トランプのように、カネと権力を使えば何でも思いどおりにできると思っている「ビジネスマン大統領」はホワイトハウスを去るべきである。

アメリカ史上初めて「弾劾で職を追われた大統領」にすべきだろう。そのために憲法第2条第4節(弾劾)があるのだ。(敬称略)

トランプが意識する賞

ノーベル平和賞ー。

昨年からトランプの周囲にいる人間が「ノーベル平和賞にあたいするのでは?」というシグナルをだしている。

私の判断では「ありえない」のだが、トランプ本人はまんざらでもなく、彼の心の奥底を覗くことができたとすると、ブロンドの髪の毛をなびかせながらヘッヘッヘとしたり顏をしている大男が座っているかに見える。

賞についてトランプは「自分から言うことではない」と、彼らしくない謙虚な態度でいるが、本当は「ノーベル賞が獲れたらあとは何もいらない」と思えるほど、強欲になっているようなのだ。

そのために金正恩と握手をし、会談を繰り返しているようにも思える。英首相ボリス・ジョンソンも「北朝鮮問題を解決し、イランの核問題も解決したら、オバマ大統領のノーベル平和賞以上の受賞理由になる」と発言し、トランプの背中を押している。

これまでアメリカ大統領としては4人がノーベル平和賞を受賞している(セオドア・ルーズベルト、ウッドロー・ウィルソン、ジミー・カーター、バラック・オバマ)。その中でもオバマは在任中、しかも大統領就任後1年半での受賞だっただけに、トランプとしては「俺だって」という思いが募っているという。

しかもオバマの時は民主党内からも「エッ、平和賞にあたいすることを達成しましたっけ」というくらい予想外の受賞だっただけに、トランプとしては自分も資格があると考えても不思議ではない。

今年のノーベル平和賞の発表は10月11日。ここまで301の個人・団体が候補になっていることはわかっている。だがトランプが候補にあがっている、、ことはないはず。(敬称略)