2020年米統領選(16):バイデンの素顔

今月12日、民主党候補による第3回目のテレビ討論会が行われた。1回目と2回目は2日間にわたって行われた(計20名)が、今回から上位10名に絞られて一晩だけの舌戦となった。

以前にも書いたが、討論会では各候補は45秒から1分間で質問に答えなくてはいけないため、テレビ的に「目立つ発言」を繰り出す傾向があり、候補の全貌を知ることにはならない。「瞬間芸」ができるかどうかを見定めるという点では有益だが、大統領としての資質や政策を理解するという点ではあまり役にたたない。

候補の人となりや基本的な考え方を知るには候補が出演したテレビ番組や、メディアとの長いインタビューを精査するのがいい。候補が番組のMCと20〜30分ほど落ち着いて話をするトークショーなどでは、台本に書かれていない本音が表出して興味深い。

9月初旬、ジョー・バイデンがCBSのトーク番組『レイト・ショー(Late Show)』に出演した。同番組は1993年から2015年までデイビッド・レターマンが司会を務めた名物番組で、私は番組が始まった年から日本に戻る2007年までずっと観ていた。

15年からは司会がスティーブン・コルバートに代わったが、小気味いいしゃべりと巧みにイマを切り取るセンスに感心させられている。そこにバイデンがゲスト出演したのだ。同番組には4回目の出演で、おしゃべりなバイデンらしさがでていて、人間バイデンが手に取るようにわかる。

コルバートとの会話の中で目をひいたのは、大統領選出馬の動機だった。コルバートがどうして出馬したのか、まっすぐな質問をすると、バイデンは一呼吸おいてから「シャーロッツビルだね」と、まるで孫に話をするかのような自然体で語ったのだ。

どういうことかというと、バージニア州シャーロッツビルで17年8月、白人至上主義者と反対派による衝突があったのだ。ネオナチを名乗る男が車で反対派に突っ込み、死傷者をだした。この事件を契機に米社会が抱える人種問題の亀裂が再び表面化した。

バイデンは番組でこう言ったのだ。

「アメリカという国の魂を誰かが回復させなくてはいけない」

元副大統領はすでに十分な資産を手にしていたし、76歳になったいま、敢えて大統領を目指す必要はないかに思われた。だが国家が分裂し、人が傷つき、トランプ大統領が解決への手立てをとらない中で、「自分がやるしかない」と思ったという。

これが100%の動機であるかはわからない。けれども、76歳のおいじちゃんが思い当たる動機としては十分に説得力がある。本当であることを祈りたい・・・。

Photo courtesy of CBS News