2020年米大統領選(18):政治家というもの

前回、「米大統領選」のテーマで書いた時、バイデンの出馬理由について記した。本人は人種問題の亀裂が深まってきたことを理由にあげ、「アメリカという国の魂を誰かが回復させないといけない」とテレビで話した。

綺麗事のようにも受け取れるし、アメリカの社会問題に真剣に取り組む姿勢でいるかにも思える。バイデンの本音は本人と周囲にいる少数の人にしかわからないのが現実だろう。アメリカ国民は今後1年かけて、その真意を探ることになる。

トランプの息子ハンター・バイデンに絡むウクライナ疑惑により、バイデンの民主党レースでの支持率は過去数週間、トップの座からずり落ちている。世論調査によっては依然としてトップのところもあるが、上院議員エリザベス・ウォーレンが1位にきている調査結果もある。

ただ来年11月の本選挙まで1年以上も月日があるので、現時点での1位、2位というのは参考程度にしかならないと思った方がいい。来年2月から始まる予備選では、別の候補が急浮上する可能性もある。過去7回、大統領選を取材してきて、いまの段階で言い切ることの愚かさを知っているつもりだ。

トランプについては、再選を目指す現職大統領として共和党の指名を獲得する(共和党代表になる)ことはほぼ確実だが、ウクライナ疑惑が今後深度を増し、違法行為があったかを弾劾プロセスで問われるかどうかが焦点になる。

それよりも先日、あらためて政治家たちが自分たちのことしか考えていないと思える事があった。トランプの弾劾を支持するかしないかで、それは表面化した。

連邦下院(定員435名)は現在、民主党が過半数を占めており235名。共和党が198名。無所属と欠員が1名ずついる。共和党議員の中にはトランプの言動に疑問を持ち、ウクライナ疑惑において、ここまでで入手できる情報だけでもトランプは「十分に弾劾にあたいする」と考える議員がいても不思議ではない。いや、いなくてはいけない。

だがニューヨーク・タイムズが先週、調べた結果では共和党下院議員でトランプの弾劾を支持する人は「ゼロ」だった。態度を保留した議員が14名いたが、最初から弾劾にゴーサインを出した人はいない。

逆に235名の民主党議員のうち弾劾支持が227名で、8人が弾劾すべきでないとの回答だった。この8人はある意味で、当件を真剣に熟慮して党の方針よりも自身の判断を優先させたという点で稀有な例である。

本来ならば、トランプの弾劾という重要な問題では党利党略の政党政治から抜け出て、国民から選ばれた連邦議員として、ダメなものにははっきりと「ノー」と言えなくては政治家としての存在意義はない。

共和党議員で、トランプを敵にまわすと自分の政治生命が危うくなることはわかるが、それは政治家として本来すべき職務をしていないことになる。真実に目をむけて行動を起こしてない政治家がいかに多いかの証明にもつながる。アメリカの連邦議員、、、こんなものである。(敬称略)