アップル社の前CEOスティーブ・ジョブズ氏が他界したあと、同社の斬新性と優位性が世界中で語られているが、実はアメリカのIT業界には賛否両論が渦巻いている。 

10月3日に本コラムで述べた通り、アップル製品はデザイン業界からの評判がよくない。というのもアメリカ企業は、ことデザインという点では世界でも遅れを取っているとの認識が大勢を占めている。

アップル製品であってもそうである。すでに「ディズニー化」が進んでいるとの意見が出され、誰しもが好む領域に入り込んでいると揶揄されている。最先端を歩くことがいかに大変であるかがわかる。そこには嫉妬も混在しているかに思えるが、こうした批判が新たな進化を生み出すエネルギーにもなる。

アップルのデザイン開発については、ドキュメンタリー映画『オブジェクティファイド(対象化)』にその一部が描かれている(日本未公開)。そこに登場するデザイナー、ジョニー・アイブ氏がこう述べている、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

参加しなくてはいけないTPP

TPP(環太平洋経済連携協定)で世論が大きく2つに割れている。

仕事がらテレビや活字メディアで、TPP問題での私見を述べてきた。TPPはすでに2年前に参加すべきだったと思っている。交渉国はすでに10回近くも協議を重ねているが、日本は今からでも参加しなくてはいけない。

理由はたくさんある。積極的な理由と消極的な理由、さらに数字の上でも参加すべき理由がある。反対派の学者やジャーナリストのトーンの中に、アメリカに「日本が乗っ取られる」「思うように牛耳られる」というものがあるが、アメリカをあまりにも知らないので驚いている。

この件で、反対派の人間は誰もアメリカ人の意見を広範に、しかも直接、聞きに行っていないことは彼らの言動ですぐにわかる。アメリカは本当に日本を乗っ取るつもりなのか。乗っ取るために日本をTPPに入れようとしているのか。

「訊いても本当のことは言わない」と思うこと事態、アメリカを知らない人の発言である。日本人より本音、いや本音しか話さないので日本については批判も讃辞も聞ける。USTR(米通商代表部)や国務省、アメリカの大学やシンクタンクの研究者、財界、労組、一般市民に訊かなくてはいけない。

そうすれば、アメリカも決して一枚岩ではなく、さまざまな意見があることがわかる。そして日本の反対派の言説が邪推であることが分かる。TPPはアメリカから誘っているわけではないことも。

反対派は農業関係者も含めて、近視眼的にものを言う人が多くて20年、いや30年先の世界の貿易体制の中にいる日本の立ち位置を想像できていない。保護主義を敷いて、国を閉ざすというオプションなどあってはいけない。

TPPに参加すると「亡国」という人がいるが、私は逆に参加しないと日本の「亡国」は目に見えていると思う。先日も、アメリカ政府の元高官と電話で話をすると「日本は守りの態勢に入らないで、もっと攻めてこないと。それでアメリカと一緒にルール作りをしましょう」と言ってきた。

しかも、TPPにはこれからカナダやメキシコも入る可能性が高いことが今日のAPECでわかった。現時点で中国は「入れていない」が、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)への道筋としていずれは中国も参加してくることになるだろう。

中国はいま「誰も誘ってくれない」といじけているが、中国がTPPのルールを遵守し、メンバー国になった時に日本が入っていないということなど考えられない。日本は「入れてもらう」ではなく、積極的にアメリカと引っ張っていく役割を担わなくてはいけない。

ここまでは積極的な理由である。消極的な理由もある。過去30年間の日米交渉の結果を見て、日本は多くの場面で負けてきた。来年からのルール作りと交渉でも、日本の審議官や交渉者が圧勝する可能性は低い。

全体的なルール作りでも関税撤廃の特例条項でも負けるので、それが結果的に日本の農業を集約させて企業化への道が開かれる可能性がある。いまのままでは農地の集約化を含めた農業改革も先送りされたまま、小国への道を辿るだけだが、「開国」によって本当の日本農業の改革への道筋ができるかもしれない。

いやいやながらの外圧に従わざるを得ず、結果として多少の犠牲はあっても、一般消費者にとっては「ありがたい」と思えることが増えていく。自民党時代はすべてそうだった。民主党でも大差はない。

これまでもガン保険が日本で導入されたり、コンビニでビールが買えたり、携帯電話が使えるようになったりという末端市場での恩恵は市民がもっとも感じているはずだ。それによって町の酒屋が廃業に追い込まれたという現実はある。

最後に、実質的な参加表明をした野田がオバマや参加国のリーダーたちに、間違っても「参加させていただきたいと思います」といった日本的な、よろしくお願いします調の言葉使いをしなかったであろうことを祈るだけだ。

すでにオバマに言ってしまったかもしれない。通訳がなんと訳したかは知らないが、国際会議の場でこれほど消極的でやる気の示せない表現はない。日本的な言葉の配慮は英語ではむしろマイナスだ。野田がどれだけわかっているのか。アドバイスした役人がいるのかどうかはわからない。

もし「お願いします」発言をしていたら、もうすでに日本は交渉で1本を取られて「ついていきます」と言ったも同然である。そうなると消極的な理由で日本が変わるというシナリオになる。(敬称略)

真の顧客サービスをアメリカに輸出する

アメリカがどう転んでも日本に敵わないことの一つがサービスの質である。中国が総体として日本経済を凌駕しても、中国人も日本の高品質サービスには舌を巻く。米中両国はヒトコトで言えば「大陸文化のせい」で細部に気が回らないと断言することもできるが、それは早計な結論だろう。

日本の「かゆいところにまで手が届く」サービスは、ある意味で日本が生み出した特異な分野であり、社会学の分野に話を進めていかないと説明がつかない。繊細さを追求する国民性というだけで日本のサービス産業の先端部分は明確化されない。

実はサービスという言葉も「サービス第一主義」という経営学上の実践もアメリカが発祥である。20世紀初頭、フォード自動車が「サービス第一主義」を掲げて、顧客の要望に応えるという経営指針を打ち出した。だが、それは現在の日本企業の多くが実践している顧客に合わせた迅速な便宜供与とは本質的に異なる、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。