中国市場への変わらぬ想い

最新号の『ビジネスウィーク』誌に興味深い記事が出ていた。西側の金融機関は中国政府の規制の厳しさや新型コロナによるビジネスの閉塞性にもかかわらず、これまで以上に中国本土での投資を加速させたい意向であるという。

モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス・グループ、さらにJPモルガン・チェース、シティーグループなどは中国本土での金融業務の拡大を画策し、利益を増やしたいとの意向をもつことは以前から知られていた。世界最大の人口を抱える国である以上、ビジネスのやり方次第で大きな収益が見込めることは当たり前のことである。

ただ北京が西側企業の活動を取り締まってきたばかりか、米国内からは中国政府の安全保障政策への異論や人権問題での不適切さが指摘され、中国から手を引くようにとの声もでていた。それでもシティグループなどは今年、中国で先物取引を行う許可を取得予定で、中国国内で100名ほどの社員を採用するつもりだという。

ただこれまで、ビジネスの拡大を目指してきた西側企業が中国で損失を計上することは少なくなかった。だがここにきて、現地パートナーと長年ビジネスの関係を構築してきた企業などが新しいビジネス・ライセンスを取得したりして、成長を見込める段階になってきている。

JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモン会長兼CEOは、「中国は多くの顧客とJPモルガンにとって世界最大の機会の1つである」と述べている。語り尽くされてきた感のある中国市場だが、本当のビジネス機会は実はこれからなのかもしれない。

本当にウイグル族の弾圧を嘆いているのか

来年2月の北京冬季五輪に政府関係者を派遣しない「外交ボイコット」が広がり始めている。米国をはじめ、イギリス、オーストラリア、カナダなどが加わり、ボイコットの輪が広がっている。

日本は岸田首相がいまだにどうすべきか判断できずにいる。13日の衆議院予算委員会で岸田氏は、「対応については適切な時期に、オリンピック・パラリンピックの趣旨、精神、外交上の観点といった諸般の事情を総合的に勘案した上で国益に照らして自ら判断する」と、煮え切らない発言をして態度を保留した。

二者択一なので、すでに腹の中では答えがでているのだろうが、米国に寄り添った決断も明言できなければ、バイデン大統領に反旗を翻して「外交ボイコットはせずに、日本は政府関係者を北京に送ります」という積極的な態度も示せない。諸外国がどう判断するかをまだ眺めるつもりなのだろうか。

個人的な意見をのべると、私は外交ボイコットには反対である。選手も政府関係者も北京に派遣すればいいと考えている。このブログをお読みの方はご存知かと思うが、私は中国に深い思い入れがあるわけではない。思い入れという点では米国に25年もいたので、完全に米国の方にウェイトが乗っている。

今回の外交ボイコットの理由としてあげられているのが、中国の新疆ウイグル自治区での人権弾圧である。確かに人権弾圧は糾弾されるべきことだが、「ウイグル民族への人権弾圧」という言葉だけが一人歩きし、政府関係者を含めてどれだけの方がウイグル民族の現状を知っているのだろうか。

ウイグル民族のほとんどはイスラム教徒で、過去にテロ事件があったこともあり、中国政府は100万を超えるウイグル民族を強制収容所に入れているといわれている。

五輪という政治が関与すべきでないスポーツの祭典に、急にウイグル民族の人権問題をだしてきて反対を唱えているように思えてならない。米英豪などが政府関係者を送らないことで、人権問題を解決できればいいが、好結果はほとんど期待できない。

こうした気持ちを抱いていると、フランスのマクロン大統領が外交ボイコットをする予定はないと発言。外交ボイコットの効果は小さく、象徴的なことでしかないと述べた。”ヒザポン”である。

本当にウイグル民族の安否を気遣うのであれば、外交ボイコットではなく、中国政府に圧力をかけるなり、物理的にウイグル民族に手をさしのべるなりの行動を起こすべきであるが、そういった方向には流れない。机上の空論として反対するだけであれば、「五輪には参加します」と宣言した方がいい。

地震と火山活動

このところ国内で地震が続いている。特に3日午前に起きた富士五湖を震源とする最大震度5弱の地震は、「富士山噴火の前ぶれではないのか」と多くの人が思ったはずだ。

武蔵野学院大の島村特任教授はメディア取材に対し、「富士山の下の深さ15~20キロの地点でマグマの流動によって起きる低周波地震の一種。規模が大きければ富士山の大きな噴火につながるかもしれず、危ない」と答えており、噴火の可能性があると指摘した。

そうしていたら、インドネシアのジャワ島で4日、最高峰スメル山(3676m)が噴火した。大規模な噴煙が上がっていく様子がネット動画で確認でき、恐ろしくなった。溶岩が火口から数百メートルにわたって流れでて住民が避難しているという。すでに死亡者も10人以上でている。

ジャワ島と富士山とでは距離が離れており、直接的な関連性はなさそうだが、本当にまったく関係がないと言い切れるのか。地質学に疎い素人としては、地球の奥深くで何らかの地殻的連動があり、地球規模で動きが活発になっているのではないかと疑ってしまう。

さらに今年9月19日、スペイン領カナリア諸島のラパルマ島で50年ぶりに火山が爆発して、流れ出した溶岩流で約2000棟が破壊された。さらに米ハワイ州のキラウエア火山も9月29日に噴火して、溶岩の流出がみられた。

少し調べると、マグマの動きは気象庁どころか地質学者にも本質的につかめていないらしく、活火山が111もある日本に住むわれわれとしては指を咥えているしかないようである。

Peace of mind(心の平和)

今日(11月10日)午後12時過ぎから日本外国特派員協会で行われた記者会見に現れたダライ・ラマ14世。オンラインによる会見だったので、実際に来日したわけではなかったが、巧みな英語での受け応えは86歳とは思えぬ生気を感じさせた。

そこで強調されたのが「Peace of mind(心の平和)」というフレーズで、会見中、なんども口にしていた。さらに「愛こそが生存の基礎である」と、ダライ・ラマらしい話を展開し、「平穏な心をもつことによって本当の幸せをつかめる」と、ここまで積み上げてきた人生哲学を口にしていた。

稼ぐことにもっと貪欲に

このところ日本人の平均賃金が諸外国と比較して、低水準なままで増えていないことが指摘されている。経済協力開発機構(OECD)の調査(2020年)によると、日本の平均賃金(年収)は424万円(1ドル110円)で、35カ国中22位となっている。

1位は米国で763万円。1990年の数字と比較すると、米国は247万円も増えているのに対して日本は18万円増でしかない。その間に日本は韓国に抜かれている。朝日新聞はこの件で、「日本経済の現在値」という特集を組んですらいる。

日本で賃金が上がらない理由はいくつかある。ひとつは企業が人件費の安い非正規の雇用を増やしてきたことだ。90年代のバブル崩壊時、雇用者の約2割が非正規だったがいまでは4割近い。さらにバブル時、多くの企業が大量解雇や大幅な賃下げをおこなって批判された。その時の否定的な過去があるため、次の不況に備えて日本企業は業績がいい時期であっても賃金を低く抑えるようになったというのだ。

さらに労働組合は雇用維持を優先するあまり、賃上げを強く要求しなくなった。そして日本人は雇用者に対して、他国と比べると賃上げを要求しないという。また日本企業は「稼ぐ力」を向上させる企業戦略に失敗しているとの見方もある。

コロナが収束しつつあるなかで、日本は国全体としてかつてのように稼ぐことにもう少し貪欲になっていい。