10年前の北朝鮮

今日(12月17日)は、北朝鮮の金正恩総書記が権力を握ってからちょうど10年目にあたる日だ。それは前総書記の金正日氏が他界した日でもある。

当ブログでも記したが、ちょうど10年前に私は北朝鮮を訪れる機会があり、北京経由で平壌に入って「かの国」を見てきた。国交はなくとも、北京の北朝鮮大使館で旅行者カードを取得でき、観光目的で入国はできる。

平壌郊外ののどかな公道。

10年前は走っている車の数がたいへん少なく、平壌から板門店まで(約170キロ)にすれちがった車はたった10台でしかなかった。それはマイカーを所有する人が極端に少ないということであり、経済的に西側諸国と比較するとかなり窮乏化が進んでいるということでもある。

平壌の地下鉄の入り口。市内には2路線があり、
開業は意外に古く1973年である。

しかし、各地で出会った市民の顔からは不思議と困窮しているという表情はなく、食べるものは食べているという印象を受けた。

あれから10年がたち、金正恩体制になって北朝鮮国内の経済事情がどう変わったのか、さらには市民の生活がどう変化したのか探りたいが、次回の訪朝はまだ見えていない。

トランプの楽観

いまから13時間ほど前(日本時間4日午後10時頃)、トランプはツイッターで、同日午前に北朝鮮から発射された飛翔体(たぶんミサイル)についてのコメントを出した。驚くほど前向きで肯定的な内容だったので、こちらが驚かされた。

これまでアメリカ政府は北朝鮮がミサイル発射や核実験をするたびに非難してきたが、今回は「いまの世の中いろんなことが起きますから」とトランプは述べたのだ。ミサイル発射を「いろんなことが起きますから」で片付けたところにトランプの金正恩に対する期待の高さがあるし、金正恩が2人の約束を破るわけがないだろうといった楽観をみる。

北朝鮮が今後大きな経済発展を遂げるために、金正恩は米国とこれまで協議してきた内容を「中断または中止する」わけがないとの態度である。4日午前に発射した飛翔体は何かの間違いであってくれといわんばかりの対応だ。

ミサイルが発射された時間からツイートまでの時間が長かったことから、トランプは安全保障担当補佐官たちと協議をしたあと、北朝鮮を刺激しない方針に落ち着いたとも思える。いかにトランプがいま米朝関係を大事にしてきるかのサインでもあるが、こうした懐柔策が通用するかどうかはわからない。

金正恩からの親書

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トランプがツイッターで金正恩からの親書を公開した。

金正恩は最初から最後までトランプのことを「大統領閣下(Your Excellency Mr. President)」と呼び、まるで手もみをして土下座をしているかのようだ。シンガポールで会った時もトランプのことをそう呼んでいた可能性がある。

内容はトランプへの感謝と米朝関係が今後もよくなることを期待し、次回の会談も楽しみにしているという前向きなものだ。これは金正恩の本心であるかにも思える。

核兵器を放棄することはないが、トランプとの個人的な関係は温めていきたいという都合のいい考えで、トランプに「親書をどうか文字通り受け取ってください」との願いが込められている。

トランプは2国間関係の「Great progress(大きな進展)」と手放しの喜びようだが、2人の間に別の取り決めがあるように思えてならない。(敬称略)

ヤクザのような・・・

5日の当ブログで、国務長官ポンペオと北朝鮮側との会談内容の「読み」を記した。トランプ政権側の北朝鮮への見方があまりにも楽観的なので、すでに密約が交わされているかもしれないとの読みである。

すると会談を終えた7日夜になって、北朝鮮政府が英語の声明を発表し、ポンペオの会談での態度が「まるでヤクザのようだった」と批判した。仲がいいどころの話ではなかったのだ。

ヤクザのようだったは英語で「gangstar-like」という単語である。ポンペオはほとんど脅しに近い交渉をしたというのだ。

ところが今朝(8日)、日本の新聞を読むとヤクザという言葉はでてこない。朝日、読売、毎日、産経を読むかぎり、北朝鮮外務省は「米側の態度と立場は実に遺憾だった」という表現でとどめている。「ヤクザのようだった」はない。

これは新聞記者たちのメモ合わせなのだろうと思う。北朝鮮とアメリカを刺激しないための配慮なのかもしれないが、北朝鮮政府がヤクザという言葉を使っている以上、「それを書かないでどうするんだ!」というのが私の思いである。

ワシントン・ポストやブルームバーグといった外国メディアはしっかりと「gangstar-like」という単語を使い、実は米朝両国が決していい関係に落ち着いているわけではないことを指摘している。

北朝鮮はアメリカ側からの非核化の要求がヤクザまがいの強硬なものと受け取り、逆にポンペオは今回の会談が「生産的で、いくつもの議題で前進があった」とまったく逆の思い抱くにいたっている。

そうなるとアメリカ側の変わらぬ楽観はいったいどこからくるのかとの疑問がさらに沸くし、米朝関係が簡単に友好関係にはならない現実もわかるのである。(敬称略)

トランプと金正恩の本当の関係

6月12日にシンガポールで行われた米朝首脳会談。表面的には、両首脳がいい関係を築き始めるきっかけになったかにみえる。

トランプは3日のツイッターでも「北朝鮮とはいい話し合いが進行中だ。過去8カ月、北朝鮮はロケット発射も核実験も行っていない。アジア中が胸を躍らせている」と楽観的なコメントを載せた。

国務長官マイク・ポンペオも今日から北朝鮮を再訪し、完全な非核化にむけての協議を行う予定だ。ここまでは順調に進んでいるかに見える。だが、本当にいい関係ができているのだろうか。

トランプもポンペオもCIAが作成した「北朝鮮は核兵器を放棄することはない」という内容の報告書を読んでいないわけがない。シンクタンクだけでなく、安全保障問題を専門にする多くの学者も「完全な非核化」はありえないと述べており、2人がこうした「現実的な見方」を知らないはずがない。

にもかかわらず、北朝鮮に対して楽観的な見方と態度を崩さない。これは何を意味するのか。

トランプらしい真の楽観を抱えて明るい将来を実現するために動いているのか、それとも「完全な非核化はありえない」という現実を踏まえたうえで、北朝鮮との会談を進めているのかのどちらかだろうと思う。

前者はほとんどありえないので、後者の「完全な非核化はありえない」ことを前提で話を進めているかにみえる。

あとは密約として、金正恩に核兵器や核物質を使用させず、売却させず、製造させずという約束をとりつけている可能性がある。

トランプと金正恩は意外にも、密約を交わすほどの仲になっているかもしれない。というのも、金正恩を暴走させないためには、それがもっとも現実的な策と思えるからだ。金体制の保証もする。

突っ張りあっていてはまとまるものもまとまらない。それが過去の米朝関係だったからだ。したたかな首脳であれば、それくらいのことはするだろう。

いずれにしても今後1年でトランプ・金正恩の本当の関係が露見するはずである。(敬称略)