核兵器の高度化とは?

27日まで2日間行われていた北朝鮮の最高人民会議。そこで金正恩総書記は自国が保有する核兵器を「高度化させる」と述べた。

高度化させるとはいったいどういうことなのか。兵器として出来上がった代物の精度をさらに高めていくということなのか。また核武力政策を憲法に明記することも決定したという。

ただ、本当に核兵器を使用することは、金総書記であっても憚られるはずであると思いたいが、すでに威嚇という領域から一歩踏み出して「使用も十分にあり得る」段階に達している。というのも、昨年の最高人民会議で核兵器の先制使用を排除しない方針を明確にしたからだ。

今回、金総書記はこうも言った。

「 核戦力政策が国の基本法として永久化された。帝国主義者の核が地球にある限り核保有国の地位を絶対譲らず、むしろ核戦力を持続的に強化するのが我々が下した戦略的判断だ」

世界の核弾頭保有数を眺めると、 ロシアがトップで5977個、次いで米国の5428 個、3位が中国で 350個、そしてフランスの290個、イギリスの225個と続き、北朝鮮は20個( ストックホルム国際平和研究所調べ)である。

金総書記はいま自らを追い込んでいるようにも見えるが、同時に周囲の声に耳をかさない境地に入り込んでいるかのようだ。危険な空気が漂っている。何事もないことを祈りたい。

さらば猪木!

アントニオ猪木氏が亡くなった。79歳。あれほど元気のいい人はそうそういるものではない。亡くなったというニュースに、心のギアがガクンと2段階ほど落ちるような落胆があった。

上の写真は2013年、外国特派員協会の記者会見に現れたときに撮ったものだ。壇上にきてすぐ、「元気ですかあああ!」と叫び、会場にいるすべての人の心を掌握したような力を感じた。

その日は猪木氏が力を注いでいた北朝鮮の拉致問題についてがテーマで、「北朝鮮との外交チャンネルを私以上にもっている政治家は日本にはいない。日朝のトップ会談が1日も早く実現できる環境を作りたい。それが私の仕事。その道筋をつける自信はあります」と述べていた。

その時までに計26回、北朝鮮に足を運んでいた。その後も毎年のように北朝鮮に足を運び、亡くなるまでに33回も訪朝している。拉致問題だけでなく、国交回復を望んでいたはずだが、野望は叶わなかった。

10年前の北朝鮮

今日(12月17日)は、北朝鮮の金正恩総書記が権力を握ってからちょうど10年目にあたる日だ。それは前総書記の金正日氏が他界した日でもある。

当ブログでも記したが、ちょうど10年前に私は北朝鮮を訪れる機会があり、北京経由で平壌に入って「かの国」を見てきた。国交はなくとも、北京の北朝鮮大使館で旅行者カードを取得でき、観光目的で入国はできる。

平壌郊外ののどかな公道。

10年前は走っている車の数がたいへん少なく、平壌から板門店まで(約170キロ)にすれちがった車はたった10台でしかなかった。それはマイカーを所有する人が極端に少ないということであり、経済的に西側諸国と比較するとかなり窮乏化が進んでいるということでもある。

平壌の地下鉄の入り口。市内には2路線があり、
開業は意外に古く1973年である。

しかし、各地で出会った市民の顔からは不思議と困窮しているという表情はなく、食べるものは食べているという印象を受けた。

あれから10年がたち、金正恩体制になって北朝鮮国内の経済事情がどう変わったのか、さらには市民の生活がどう変化したのか探りたいが、次回の訪朝はまだ見えていない。

トランプの楽観

いまから13時間ほど前(日本時間4日午後10時頃)、トランプはツイッターで、同日午前に北朝鮮から発射された飛翔体(たぶんミサイル)についてのコメントを出した。驚くほど前向きで肯定的な内容だったので、こちらが驚かされた。

これまでアメリカ政府は北朝鮮がミサイル発射や核実験をするたびに非難してきたが、今回は「いまの世の中いろんなことが起きますから」とトランプは述べたのだ。ミサイル発射を「いろんなことが起きますから」で片付けたところにトランプの金正恩に対する期待の高さがあるし、金正恩が2人の約束を破るわけがないだろうといった楽観をみる。

北朝鮮が今後大きな経済発展を遂げるために、金正恩は米国とこれまで協議してきた内容を「中断または中止する」わけがないとの態度である。4日午前に発射した飛翔体は何かの間違いであってくれといわんばかりの対応だ。

ミサイルが発射された時間からツイートまでの時間が長かったことから、トランプは安全保障担当補佐官たちと協議をしたあと、北朝鮮を刺激しない方針に落ち着いたとも思える。いかにトランプがいま米朝関係を大事にしてきるかのサインでもあるが、こうした懐柔策が通用するかどうかはわからない。

金正恩からの親書

trump-kim-letter7.13.18

トランプがツイッターで金正恩からの親書を公開した。

金正恩は最初から最後までトランプのことを「大統領閣下(Your Excellency Mr. President)」と呼び、まるで手もみをして土下座をしているかのようだ。シンガポールで会った時もトランプのことをそう呼んでいた可能性がある。

内容はトランプへの感謝と米朝関係が今後もよくなることを期待し、次回の会談も楽しみにしているという前向きなものだ。これは金正恩の本心であるかにも思える。

核兵器を放棄することはないが、トランプとの個人的な関係は温めていきたいという都合のいい考えで、トランプに「親書をどうか文字通り受け取ってください」との願いが込められている。

トランプは2国間関係の「Great progress(大きな進展)」と手放しの喜びようだが、2人の間に別の取り決めがあるように思えてならない。(敬称略)