「ノマドランド」

観たい!観たい!観たい!

久しく映画館に足を運んでいないこともあるが、米時間25日夜にアカデミー賞で作品賞や監督賞などを獲った「ノマドランド」を早く観たいという思いが募っている。

アカデミー賞の発表後、Youtubeで22分にまとめられたダイジェスト版を観たら、すぐにでも全編が観たくなった。内容は企業倒産によって住む家を失った女性がキャンピングカーでの生活をはじめ、全米各地でいろいろな人と出会って人生を見つめ直すというストーリーだ。主演のフランシス・マクドーマンドはアカデミー主演女優賞を獲得している。

派手なアクションも甘い恋愛もない映画だが、22分のダイジェスト版を観ただけでも「生きている間にぜひ観ておくべき映画」という印象をうけた。

脚本も手がけたクロエ・ジャオ監督の紡ぎだすセリフに打たれもした。ジャオ氏は中国生まれの39歳で、こぼれ落ちんばかりの才能が感じられ、映画全体の魅力とおのおののシーンがそれぞれ光を解き放っており吸い込まれそうになった。

はやく観たあああい!

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バイデン、思いを語る

「この人は本当に真っ当な人物なのだろう」

今週16日に行われたバイデン大統領と市民との対話集会を、ユーチューブで観たあとの率直な感想である。大統領に向かって「真っ当な人物」と述べることは失礼かもしれないが、距離を置いてみてもそうした思いがあった。

CNNが主催した対話集会は、いまのバイデン氏のありのままをさらすのに十分な効果と価値があった。同氏は約75分の集会で、まったくペーパーに頼らず、数十人の市民から投げかけられる質問に壇上で実直に答えていた。

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もちろん質問内容は事前にホワイトハウス側に伝えらえていただろうし、その答えも用意されていたはずである。だが78歳の大統領はほとんど淀みなく、何も見ずに受け答えをした。むしろ想定問答集を覚えてその通りに話すことの方が難しかったかもしれない。いまの自分の思いをその場で表現する方が、テレビの視聴者の胸に刺さることをよく理解していたと思われる。

内容はコロナのことから教育、最低時給賃金、トランプ前政権、移民の問題まで多岐におよんだ。政権誕生からまだ1カ月だが、すでに大統領を数年やってきたかのような沈着で泰然とした受け答えで、誠実さがにじみ出ていた。

「私はホワイトハウスで寝起きしたいから大統領になったのではありません。この国の将来のためになる決断をするためになったのです。大統領として皆さんに仕えられることは本当に名誉なことです」

少なくともバイデン氏は心をこめてそう述べていた。1973年から連邦上院議員を務めてきた政治家である。いま自分が何をすべきかを熟知しているはずである。そしていま国家が必要としているものは前向きな姿勢であることを示した。それは次の言葉に表れていた。

「いま国は分断されているといいます。でも明確に分断されているわけではない。外にでて、いろいろな人と話をしてみてください。両極にいる人たちでさえ、話し合いができる余地を残しています。はっきりと分断されているわけではないので、私はまとめることができると思っています」

久しぶりに期待のできるリーダーが登場したと言っていいかもしれない。

トランプの弾劾裁判開始

米時間9日から連邦上院でトランプ前大統領の弾劾裁判がはじまる。

下院では1月に弾劾訴追決議案が可決されたが、上院では100議員の3分の2以上が賛成しないと可決できないことから、難しいのが現状だ。現在、上院では共和・民主両党が50人対50人で拮抗。最低17人の共和党議員が「党の和を乱して」弾劾賛成に回らないと可決できない。

現時点では10人ほどの共和党議員だけが反トランプの立場で、トランプ氏はフロリダでのゴルフ三昧の日々を奪われることはなさそうだ。

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しかも上院ではすでに短期間で裁判を終わらせようとの申し合わせができており、1週間ほどで「トランプ弾劾されず」というニュースが流れるだろう。

それよりもトランプ氏にとって痛手になると思えるのが、今後の公職への出馬を阻止される投票(憲法修正第14条第3節)が上院で行われるかもしれないことだ。同氏が2024年の大統領選に再び出馬する意向があるならば、この決定は「アチャー」以外のなにものでもない。

定年をなくそう!

今日(2月3日)の朝日新聞朝刊7面に、ある中堅商社が定年を実質的に廃止するという記事が出ていた。

大変喜ばしいニュースであると同時に、「ようやくか」との思いもこみ上げてきた。21世紀になってもいまだに定年があることに、個人的には違和感を覚える。今日のブログは少し長くなるが、最後まで読んでいただければ幸いである。

まず朝日の記事を簡単に紹介させて頂きたい。化学品や情報システムなどを扱う三谷産業(金沢市)が「無期限の継続雇用制度」を今年4月に設けるという内容だ。日本国内にあっては、リベラルでかなり前向きな考え方の企業である。健康で体力に問題がなく、本人が働き続けたいのであれば無期限で働けるようにする(定年をなくす)というのだ。素晴らしいことである。

同社がこの決断にいたった背景を説明したい。昨年3月、政府はある法律を成立させた(施行は今年4月)。「改正高年齢者雇用安定法」という名前(いつも思うが官僚はもっとキャッチ ー で覚えやすい法律名を考えるべきである)で、定年を①廃止、②延長、③定年後の継続雇用、の3つから選択できるようにする内容で、社員を70歳まで働けるようにしたものだ。

だが三谷産業は法律施行に合わせて、定年を実質上廃止することにした。70歳ではなく、はっきり言えば死ぬまで働けるということである。多くの方はこの決断を「英断」と捉えるかもしれない。しかし、冒頭で「個人的に違和感を覚える」と書いたとおり、私にしてみると「ようやく」でしかない。

またアメリカとの比較で恐縮だが、アメリカには定年というものがない。少なくとも過去50年以上にわたって定年はない。実は1967年に、年齢を理由にして社員を解雇することは差別にあたるとして、「 雇用における年齢制限禁止法(The Age Discrimination in Employment Act) 」という法律ができたのだ。これによって、「あなたもう65歳だから辞めてください」と、年齢を理由に社員を解雇できなくなった。つまり定年の廃止である。

それでも現実的には、アメリカ人は 65歳から70歳くらいになると自分で退職の線をひいて、仕事を辞める。日本と違うのは、会社から「辞めてください」と言われて退職するのではなく、自らが進退を決められるということだ。

人によっては黒柳徹子さんのように、80歳を超えてもバリバリ現役で仕事をこなせて、かつ自分でも仕事を続けたいという方がおり、こうした人たちに対して「退職年齢がきたから辞めてください」というのはあまりにも忍びないし、社会にとっての損失であるとも言える。

ただアメリカ企業も天使ではない。年齢を理由に解雇できないので、高齢になって効率的に業務ができない社員に対しては、他の理由で解雇を言い渡すことはある。この点ではいまでも訴訟問題が起きていたりする。それでも基本的に、経済的な理由で仕事を続けたいという人や、仕事を続けた方が健康でいられるという人はずっと仕事をしていられる。

日本も当然、そうあるべきだろうと思う。だから「定年をなくそう!」なのである。

アメリカ社会のニュートレンド

バイデン新大統領が誕生した。就任演説は日本時間21日午前2時からだったが、私は同日正午からテレビ朝日の番組に出演して話をする予定だったので最後まで観た。

バイデン氏は国家の団結・統一の必要性を繰り返し述べていたが、それは今のアメリカ社会がいかに分断されているかを象徴するもので、ある意味、バイデン氏のような良識人だからこそ真摯に団結・統合という言葉を口にできたのだろうと思う。分断されたアメリカ社会をまとめあげることが苦難の道であることは多くの方が知るとおりで、どういった道筋があるのかも明確には見えていない。それでも、トランプ時代のアメリカ一国主義から多国間の交渉によってモノゴトを進めていく姿勢は望ましいし、喜ばしい。

バイデン氏は時速160キロを超す豪速球を投げる投手ではないし、キャッチャーが捕れないような魔球をもっている投手でもない。丹念にコーナーをついていく地道なタイプなので、長期的にはむしろバイデン氏のような政治家が名を残すことにかもしれない。

すでにさまざまな政策が用意されているが、私が注目しているのはニュートレンドとも言える移民政策である。中南米のヒスパニックを中心に、8年計画で約1100万人を米国市民にしようという計画がある。

胸襟を開いて多くの移民を受け入れる考え方の裏には、ある狙いがあると思われる。ヒスパニック系移民は米市民になったときに民主党支持者になる可能性が高いことから、今後の民主党を考えると移民の受け入れは大きなメリットがあるのだ。

極論を述べれば、ヒスパニック、黒人の人口が増えれば増えるほど今後は民主党から大統領が生まれやすくなるということだ。バイデン氏がそこまで狙っているかどうかは定かではないが、十分に想定できることだと思っている。