アー、また忘れた!

最近、以前にもまして物忘れが加速してきているようで怖くなる時がある。人の名前やテレビで観たドラマのストーリーなどを、気持ちいいくらいに忘れていることがある。しばらくしてから思い出すこともあるが、以前よりも時間がかかるようになった。

先月、仕事場の日本外国特派員協会(FCCJ)のワークルームでフランスから来たばかりの記者Dさんと知り合った。彼は毎日ワークルームで仕事をするわけではないので、たまにしか姿を見せない。私も週に3回くらいのペースなので、行くたびに顔を合わせる訳ではない。

昨日、ワークルームに行くと、その彼がすでにデスクに座って仕事をしていた。うしろ姿からすぐに彼であるとわかったので声をかけたが、名前がすぐに出てこない。私はまず名前を言ってから「おはよう。元気?」と言いたかったのだが、名前が咄嗟に出てこなかったので、「おはよう。元気?」だけになってしまった。

雑談をしてから仕事を始めたが、名前を思い出せなかったやるせなさがズーンと胸にきた。仕事をしながら、10分くらい名前を思いだそうと試みてからようやく思いだした。しばらくしてから彼の名前を呼んでまた話をしたが、「いやあ、さっき名前が思い出せなくて」とは言えなかったので、何事もなかったかのように振るまった。

「記憶力日本選挙権大会」の優勝者である池田義博氏によると、記憶力を保つには3つのことが重要だという。1つは「覚える意志」で、なんとしても覚えていえるんだという意欲を失ってはいけないという。

2つ目は「回数」。何度も復習することで記憶は確かにものになっていく。何も新しいことではない。子どもの頃から先生に言われてきたことだが、65歳になると、なかなか意欲を持って復習するという作業ができなくなる。

そして3つ目は「感情」、つまり感受性が大切なのだという。というのも、記憶をつかさどる海馬の隣に扁桃体がある。扁桃体は喜怒哀楽に反応するので、何らかの感情が動くと脳内で隣に位置する海馬が刺激を受けて、記憶が強化される仕組みになっているという。

思い返してみても、歳とともに感受性が鈍くなり、覚える意志は弱まり、さらには忘れないように復習することもなくなっているので、これではモノ忘れが激しくなるのは当たり前である。池田氏によれば、何歳からでも遅くないということなので、腕まくりをしてこれから頑張ってみたいと思っている。