テレワークの功罪

コロナの影響で自宅で仕事をしている人が増えている。「テレワーク」、「リモートワーク」と呼ばれる仕事のスタイルはすでに多くの分野で定着し、今後も続きそうである。

ただ、テレワークによって生産性が上がったのか下がったのか、また個人が満足しているのか否かという点で統一見解はなく、統計数字をみてもバラツキがある。

たとえば、今年7月に日本生産性本部が発表した「働く人の意識調査」(1100人対象)によると、日本でのテレワークの実施率は20.4%で昨年7月以降、大きな変動はないとしている。意外なほど少ない数字である。さらにテレワークをしている人の中で、7月に出勤した日数が「0日」だった人は11.6%。この数字も少なく、同調査によると、最近は出勤する人が増え始めているからだという。

ただ日本トレンドリサーチが行った調査(496人対象)によると、テレワークをしている人の割合は58.5%で、日本生産性本部が出した数字の2倍以上である。また私がいま読んでいる本(『同調圧力の正体』)の中に出てくる東京商工会議所が行った調査によると、テレワーク率は67.3%だという。同書はさらに、従業員300人以上の企業ではいま、テレワーク導入率は90.0%であるとも記している。ここまで数字に開きがあると、本当のテレワークの姿はぼやけてしまう。

仕事の生産性(効率)という点では、日本生産性本部の調査では59.1%の人が効率が上昇したとしている。日本トレンドリサーチの調査では、43.4%が業務効率は落ちないと回答。東京商工会議所の調査では、21%の回答者だけが効率があがったとしており、またまた調査団体によって数字に大きなバラツキが見られた。

テレワークの満足度という点では、日本生産性本部の調査が75.7%と最も高く、日本トレンドリサーチも73.8%(出社時よりもストレスが減る)という数字で、多くの人は自宅で仕事をすることにそれなりの充実感を味わっているかにもみえる。東京商工会議所の調査では満足度は計られておらず数字にはでていない。

テレワークというのは個人の性格や自宅での仕事環境、さらに職種によっても捉え方が違ってくるはずで、会社でいつも不満を抱いている人がテレワークによって一人でのびのび仕事ができる状況を喜ぶ人は多いかもしれない。それでも人と話をする機会が格段に減るので、その点で寂寥感を抱く人は多いだろう。「テレワークは一長一短アリ」というのが実情かもしれない。