ある日の思い出

今朝、突然にして小学校5年時のある光景が脳裏に蘇ってきた。全校生徒が校庭に集まった朝礼の時間で、皆は整列して校長先生の話を聴いている。

私は眠気が残っていたため、校長先生の話をほとんど聴かずにただボーッと立っていた。その時、校長先生が私の名前を呼んだのだ。私はなぜ自分の名前が呼ばれたのか理解できず、キョトンとしていた。すると、担任の先生が私のところまでやってきて「堀田君、すぐに前へ出なさい」といって、全校生徒の前にでるように促した。

皆の前で説教されるのかと思い、肩をすぼませながら校長先生の前に歩を進めた。すると、校長先生は「表彰状、、、」と言って賞状を読み始めたのだ。私は合点がいかなかったが、明らかに何らかの賞状を受け取る流れだった。すぐに、授業で読書感想文を書く時間があり、担任の先生が私の感想文をコンクールに送ってくれ、それが賞を獲ったことがわかった。

それまで賞状など貰ったことがなかったので、想定外のことだった。その日のうちに、担任の先生が「堀田君が書いた図鑑の感想文が面白かったのでコンクールに送りました」と聞かされた。

私は大学時代、同人誌に文章を書いていたし、大学院を卒業してからは仕事で記事を書くようになった。1990年にフリーランスのジャーナリストとして独立して今にいたるが、物書きの原風景は小学5年時のあの読書感想文なのだろうと思う。いろいろな思いを辿っていくと、いまから50年前のあの図鑑の感想文に辿りつける気がしている。