東京五輪が始まり、テレビの前にいる時間が増えた。4年に1度しかこないスポーツの国際イベントであり、観ておくべき選手や競技が目白押しである。
私には子どもの頃から気にしている競技がある。走り幅跳びだ。小学生の時、メキシコ五輪でボブ・ビーモン選手が8メートル90センチを飛んで当時の世界記録を打ち立て、その時の勇躍がいまでも鮮明に脳裏に焼きついている。とにかく強烈なインパクトがあった。
当ブログ(オリンピックと限界 )でも書いたが、1968年当時、日本の実況アナウンサーは「この記録は今後1世紀は破られないかもしれません」と叫んだ。人間が人間である以上、スポーツで争う距離や時間といった記録はいつか限界がきてしまうかもしれないとの思いがある。ビーモン氏の記録は当時としては、誰も破れない記録に思われた。
しかし23年後、その記録はあっけなく破られる。アメリカ人のマイク・パウエル氏は、「記録というのは塗り替えられるもの」と言わんばかりに、8メートル95センチを飛ぶのだ。少し大袈裟だが、それこそが人間の可能性であることを証明したかのような偉業だった。いまは誰がその記録を更新するのか楽しみである。
人間には限界があるが、9メートルはまったくの夢という距離ではないはずだ。今年の東京五輪ではアメリカのジュヴォーン・ハリソンという選手もいるが、キューバ代表のファン・ミゲル・エチェバリア選手が追い風ながら8メートル83センチを過去に飛んでいて、9メートルの壁に迫れるのではないかと期待している。