トランプの独占インタビュー

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米時間10日、フォックスニュースのキャスター、ローラ・イングラムがトランプに独占インタビューを行った。保守派の論客であるイングラムは以前にも独占インタビューをしており、いわば「常連のトランプ応援団」といったところだ。

イランの司令官ソレイマニの殺害について、トランプがどう説明するのかがインタビューの核心だった。米東部時間午後10時から1時間の枠で放映した番組を観た。

これまで国務長官ポンペオを含めた政権幹部はソレイマニ殺害の理由として、「アメリカの施設が攻撃される危険性が迫っていたから」と説明していた。トランプはこう述べた。

「(攻撃対象は)バクダッドにあるアメリカ大使館であったと言えます。(バクダッドを含めて)4つのアメリカ大使館が狙われていたことをお知らせします」

「大使館を爆破しようとしていたのです。アメリカの施設と職員に差し迫った危機がせまっていたわけです。差し迫ったというのは、詳細な攻撃情報が入手できていたということです」

こうした機密情報がホワイトハウスにもたらされた時、歴代の大統領は今回のようにドローンを使ってでも殺害しにいくか、関係機関に連絡をして画策者を拘束しにいくか等を行うが、トランプは前者を選んで実行に移してしまった。

9日のブログでも触れたが、まだ行動を起こしていない人間に対し、「おまえはこれから爆弾テロを起こすから」という、まだ行ってもいない将来の行動を理由に情け容赦なく殺しにかかっている。ソレイマニを擁護するつもりはないが、将来の行動を先を見越して殺害したトランプを擁護することももちろんできない。むしろ、暴挙として糾弾されなくてはいけない。

それでも米メディア「ザ・ヒル」の世論調査では、43%の回答者が今回のトランプの行動に賛同している。この数字はアメリカでのトランプ支持率とほぼ同率である。はっきり述べると、人殺しであってもトランプがやれば認めてしまう人たちがそれだけいるということである。(敬称略)

何をもって勝利と呼ぶのか

どうやらアメリカとイランは最悪の事態を回避したようだ。回避したというより、両国ともに「戦争」という領域に足を踏み入れることに躊躇したと言った方が正確かもしれない。

トランプはイラン司令官ソレイマニの殺害命令を下す前、補佐官たちから十分に事後の影響や法的正当性を聞かされていた。これは国務長官ポンペオが国務省担当の米記者に語ったもので、トランプが衝動的に決めた政治判断ではなかった。

だが議会の承認をとりつけたわけではない。2003年、ブッシュ政権がイラク侵攻を決めた時、連邦議会上下両院は過半数の賛成票で出撃に許可をだした。だがトランプは政権内の限られた人間だけが知る状況下でドローンの出撃命令をくだしている。

トランプにしてみれば目的が達成されて、勝利したとの思いを抱くだろうが、ソレイマニも一人の人間である。自身の知らないところからミサイルが飛来して、法的に裁かれたわけでもない状況下で突然に命を奪われたのだ。

ソレイマニはブッシュ政権時代からアメリカ政府が目をつけていた要注意人物だったが、問答無用で人間を抹殺する正当性は誰も持ち合わせていないはずだ。トランプは8日の声明文の中で、「私の命令の下、米軍は世界のトップ・テロリストであるガセム・ソレイマニを抹殺した」と誇ったが、百歩譲って、過去に何人もの人間を殺害してきたテロリストであっても前時代的な手法で人を殺すことの合法性は、わたしには見いだせない。

両国の全面戦争に至らないことはよかったが、カーボーイ気取りのトランプの悪行にはどうしても納得がいかない。(敬称略)

安倍がすべきこと

トランプはまるで西部劇の主人公を演じているかのようだ。

アメリカとイランが戦闘態勢に入っている中、トランプは気に入らない相手を撃ち殺す役を地でいっているかに見える。報復の応酬は失うものの方が大きく、最も被害を被るのはアメリカとイランの両国民であることを理解しなくてはいけない。

イラン革命防衛隊司令官のソレイマニをドローンで殺害したことで、イラン側は報復を宣言。それに対し、トランプはイランが報復してきた場合、イランの52施設を攻撃するとツイッターで反撃。いまのところ両者がひく様子はない。

トランプの論理はこうだ。米人記者に語っている。

「イランはアメリカ人の殺害が許され、拷問することも許されている。路上で爆弾を使用して、アメリア人を殺害することが許されている。その状況下で、アメリカ人はイランの文化施設に触ることもできなっていうのか。そんなわけはないだろう」

銃を持ち出して、情け容赦なく相手を撃てた時代は150年ほども前のことだ。いまは国際法があり、多くの戦争を経験して積み重ねてきた見識と倫理があるはずだが、トランプの眼中には入ってこないようだ。

入ってきたとしても、軍事行動を慎むという選択肢は取らない可能性が高くなってきた。イランもアメリカに対する嫌悪感は相当ななもので、総合的な戦力では勝てないとわかっていても強気な態度にでている。

ここは日本を含めた先進国のリーダーが両国の仲裁にあたる必要がある。全面戦争に入る前に、安倍にはワシントンに飛んでほしい。ゴルフをしてる場合ではない。(敬称略)

今年、注目すべき米関連ニュース3点

1点目: アメリカとイランは戦争に突入するのか

昨日、米軍がドローンを使ってイランの司令官を殺害したことで、両国関係は一気に緊張の度合いを高めた。昨年12月28日にアメリカの民間業者がイラン・シーア派によって殺害されたため、トランプが報復攻撃をしかけたのだ。

だが両国の軋轢は昨日、今日に始まったわけではない。2018年5月にトランプがイラン核合意から一方的に離脱し、イランへの制裁と圧力を強めたことでイランは反発。その後、アメリカの同盟国であるサウジアラビアがイランに攻撃される事件があり、すでに「ドンパチは始まっている」と表現する関係者がいるほどだ。

2点目: アメリカと北朝鮮は戦火を交えるのか

金正恩が昨年末、ミサイルのクリスマス・プレゼントをアメリカに贈るかどうかが話題になった。長距離弾道ミサイルを使うかのどうか、さらにトランプがどう北朝鮮を迎え撃つのか。2020年、急速に高まる北朝鮮の脅威で書いたように、最悪の事態も想定しておく必要があるだろう。 

3点目: トランプは再選されるのか

2月3日から予備選が始まる。私は同月7日からアメリカに飛び、ニューハンプシャー州予備選を取材予定だ。夏の党大会までは民主党の候補者選びが話題の中心になる。トップ4(バイデン、サンダーズ、ウォーレン、ブダジェッジ)の誰かに決まるだろうが、私はブダジェッジにもっとも大きな可能性があると思っている。

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バイデンにはキレがないし、ブルームバーグ(4人の中に入らない)には広範な支持が集まっていない。サンダーズとウォーレンは左に寄り過ぎている。現在37歳の若さが抜きん出る気配を感じる。(敬称略)