航空会社のマイレージがたくさんたまっていた。今秋に期限が切れてしまう分があったので使うことにした。5泊6日の夏休み。
航空券にお金はかからない。しかもビジネスクラスで往復できるだけのマイレージ数だったので、他のところにお金を割いて豪勢な夏休みを、と思っていた。けれども貧乏性はそう簡単に治らない。
私はごく普通のサラリーマン家庭で育った。貧乏と呼べるほど貧しくはなかったが、裕福とも呼べず、中流の中にいた。両親ともに倹約の美徳を知っていたので、なるべく無駄遣いをしない生活習慣が染みついている。
移動ではバスや電車に乗るのが当たり前だったが、仕事でタクシーを使う機会が増えたのでタクシーだけはプライベートでもよく乗るようになった。貧乏くささを克服できた唯一の点かもしれない。
だが今回の旅で「貧乏くさいなあ」と思った瞬間があった。ホテルにチェックインし、寝る前になって喉の渇きを感じたので何か飲みたかった。部屋の冷蔵庫にビールや炭酸飲料、さらにミネラルウォーターが冷えている。
特にミネラルウォーターはホテル価格であってもたいした金額ではない。コンビニで買うよりは高いが、冷蔵庫から出して飲んでも誰もとがめない。だが躊躇してしまうのだ。自分には「買い出し」と言いきかせて、近くのコンビニまで買いに行ってしまった。
部屋に戻ってきて水を飲み、残りを冷蔵庫にしまおうと思ってドアを開け、すでに鎮座していたミネラルウォーターのボトルの横に置いたときの言いようがない寂寥感。
嗚呼・・・。