眼球って縫えるんです(2)

(昨日からの続きです。今日は手術から3日目。まばたきをすると、まだ眼球の縫い糸がチクチクします。殴られたあとのように、いまだに白目は全面充血しています)

自宅の近くの眼科医にいくと、すぐに眼底写真を撮られ、簡単に診断がでました。

「網膜前膜(もうまくぜんまく)です」

医師ははっきりした口調で断定しました。ネットで調べた病名にはなかった診断だったので、もう一度聞き直しました。

「黄斑上膜ともいいます」

生まれて初めて聞く病名でした。すぐに反応できずにいると、医師は早口に「この病気に自然治癒はありません」と言い、このままだとどんどん視力が悪くなると告げてきました。目の前に暗いベールがかかるようでした。

「ただ短期間で悪くなることはないですから、しばらく経過観察をして、手術するかしないかを決めてください」

薬はいまのところ開発されていないので、手術しか手立てはないという。放っておくと、ほとんどの患者は視力が0.1以下にまでさがるらしい。ただ高齢者であれば、手術をせずにそのままにしておく人もいるということでした。

レーシックの問題点

医師との会話の中で、私が以前レーシックの手術をしたことを話しました。すると医師は目尻に少しシワを寄せて、「レーシックですか・・・」と浮かない顔をしたのです。

角膜にレーザーを照射して視力を矯正するレーシックが多用されはじめたのは10年ほど前です。年間40万人くらいの人が受けていました。しかし今では手術を受ける人はずっと減っています。というのも、問題点が多く指摘されはじめたからです。

私がアメリカでレーシックを受けたのは2000年でした。アメリカでは年間100万人ほどが手術を受けていた時期です。近視の人は受けるべきという風潮さえありました。

しかし近年は視力低下や網膜の病気を併発する症例がずいぶんと報告されています。もちろん何の支障もきたさない人の方が多いです。

忙しい眼科だったので、医師は手短かに病状を説明しただけで診察を終わらせようとします。最後に私が「手術する場合は・・・」と言うと、「ここではできないので、大学病院に紹介状を書きますよ」と返答しました。

自宅への帰り道、この医師には頼みたくないと思いました。事務的な冷たさが嫌だったからです。あらためて別の眼科医に診てもらうことに決めましたが、心には厚い雲が垂れ込めていました。

ネットで網膜前膜のことをずいぶん調べてから別の眼科医で診てもらうと、診断は前回と同じ「網膜前膜」。病名は確定しました。ただ2人目の眼科医は、いわゆる上から目線ではなく、患者と同じ視線にたち、親身になって話を聞いてくれます。

やはり手術しか治す手段はないという答えだったので、その時点で手術を受けることに決め、硝子体(眼球)を専門にしている帝京大学医学部付属病院の眼科に紹介状を書いてもらうことにしました。

生まれて初めての入院が迫っていました。(続く)