トランプと不法移民

ドナルド・トランプ前大統領(以下トランプ)が不法移民に対して厳しい態度を取ってきたことは多くの人の知るところである。2016年の大統領選でトランプが当選した理由の一つが移民対策の強化を打ち出したからだと言われている。

実際、トランプが当選してからメキシコからの不法移民の数は減り続けた。共和党支持者だけでなく、多くのアメリカ人は違法なルートで国内に入り込んでくる移民に対して快く思っていない。入国するのであれば正規の手続きをつかって入ってくるべきと考えるのは当然といえば当然である。

今年の大統領選の共和党大会で、会場には大きなプラカードが掲げられた。そこには「 Mass Deportation Now(今こそ大量強制送還を)」と記されていた。移民についてのアプローチは、民主党が歴史的に寛容策をとっているが、共和党は厳格な対応を推し進めてきた。

ただ米国は基本的に移民によって成り立っている国であり、移民を受け入れることで経済活動をより円滑にするとの見方があり、筆者は個人的にはこちらの考え方に賛同する。多くの移民を受け入れるという寛容な態度もアメリカには必要だからだ。

ただ、米国には推定1100万ほどの不法移民が滞在していると言われ、トランプは軍隊を使ってでも強制送還をするとの意気込みだ。しかも今年の選挙では、こうした強硬な移民政策を選挙キャンペーンの中心に据えている。不法移民を一網打尽にするために州兵を出動させ、収容所に収容し、強制送還させるつもりだという。

こうした強硬策が米市民に広く受け入れられるかどうかは11月の選挙にあらわれるはずだ。さて、どうなるのか。(敬称略)

米大統領選:互角という可能性

(A version of this map is from CNN)

株価暴落のニュースが世間を騒がせているが、米大統領選は11月5日の投票日に向けて粛々と進行している。各種世論調査の数字を眺めると、現時点では民主党カマラ・ハリス氏がドナルド・トランプ氏をややリードしている調査が多いが、今後3カ月でどういう展開になるかは誰も読めない。

上の地図は、CNNが最新の世論調査でどちらが優勢かを州ごとに示したものだ。青が民主党(ハリス)で赤は共和党(トランプ)。ご存じの方も多いと思うが、米大統領選というのは総得票数で争う選挙ではなく、全米50州に人口比で割り当てられた「選挙人(計538人)」を取り合う戦いである。

カリフォルニア州は最も人口が多いので、選挙人数は55。次いでテキサス州が38人、フロリダ州が29人、人口の少ないモンタナ州やバーモント州などはそれぞれ3人が割り当てられている。

538人の過半数である270人を奪った候補が勝つのだが、今年は接戦が予想されているので、269人対269人の互角になる可能性が指摘されている。米国は今、それほど真っ二つに割れているということである。引き分けになる確率は低いのだが、シナリオとしては十分あり得る。

米選挙史を眺めると、過去に 一度だけ引き分けになったことがある。1800年に行われたトーマス・ジェファーソンとアーロン・バーの間で行われた選挙で、今年は2度目の互角の可能性がでている。今後の展開がみものである。

カマラ・ハリスの邪悪性

米大統領選の投票日まで3カ月あまり。現職バイデンが「降りた」ことで、選挙はカマラ・ハリス(民主党)対ドナルド・トランプ(共和党)という流れになった。先週まで2人の支持率はほぼ拮抗していたが、 ABCニュース・イプソスが7月26、27両日に1200人を対象に実施した調査では、ハリスの支持率は1週間前の35%から43%へと急増した一方、トランプの支持率は40%から35%へと低下。同時に過去1週間でハリスへの献金額は日本円で300億円を超え、期待感の高まりが数字に現れた。このままトランプを引き離してゴールテープを切る可能性さえでてきた。

しかし、である。私は過去8回の大統領選を現地取材した経験から、そう簡単に決着しないのが大統領選であると考えている。実は大統領選の本当の戦いは党大会が終わってからで、今後は2人の討論会はもちろん、日々繰り広げられる選挙戦のやり取りや、有権者の関心を引く政策、さらに掘り下げられる人物像などが表にでてきて支持率が変化することがよくある。

両候補ともすでに政治経験があり、表舞台にでてきて長いが、新たに表出する一面があったりする。たとえばハリスの別の顔といえる側面が、過去1週間で米メディアに登場している。

ハリスの人柄というのは親切で陽気で、いつも笑顔が絶えず、政治家としても状況把握能力が高く、集中力があるといった肯定的なものだが、信じられないような裏の顔が表出してきている。

それは過激すぎるほどの勢いで人を批判する行動で、「魂の破壊」とまで呼ばれており、いじめっ子(Bully)として周囲では知らない人がいないというのだ。ハリスはバイデン政権の副大統領になってからの1年間で71人のスタッフを採用したが、1年後に残っていたのはたった4人だったという。

これはなにも副大統領になってからのことではなく、ハリスが上院議員だった時も同じだった。上院議員だった2017年から2021年で、彼女のスタッフの離職率は上院議員の中では9番目に高かったという。自分のスタッフだけではなく、他議員のスタッフも平気で罵倒できると当時から評判だったようだ。ハリスのことをよく知る人物は、彼女のチームは「士気が低く、コミュニケーションが希薄で、スタッフ同士の信頼も薄い」と散々なもので、これが本当のハリスの姿だとしたら、米国のトップに就いてほしくないと誰しもが思うだろう。(敬称略)

ハリス VS トランプ

日本時間22日午前、米ジョー・バイデン大統領が大統領選から撤退すると発表し、後継者にカマラ・ハリス副大統領を指名したことで、11月の戦いは事実上ハリス対トランプに移行した。

すでに米メディアは2人が戦った時を想定して世論調査を行っており、いくつかの調査では、現時点でトランプ氏がハリス氏を平均2ポイントほどリードしている。「ニューフェイス」になったことで、ハリス氏がトランプ氏を引き離すとも考えられたが、実際には保守層のトランプ支持は厚く、大きく動いていない。ましてや共和党は党大会が終わり、党のまとまりを強めたところなので、ハリス氏は保守の岩盤層を崩せていない。

トランプ氏は撤退を決めたバイデン氏に対し、慰労を込めた敬意を表するのかと思ったが、実際にSNSで発した言葉は、「彼(バイデン)は史上最悪の大統領だ。群を抜いて最も劣悪な大統領」という散々な内容だった。

さらに「ウソとフェイクニュースを発信し、(自己防衛できる)地下から出ないことで大統領という地位をえた」といった憎まれ口をたたいて、バイデン氏を攻撃。トランプ氏の本音を垣間見たような気がした。

米国は本当にこんな節操のない人物を再び大統領にしようというのかーー。

バイデン:大統領選は辞退しろ

バイデン大統領の再選への道が険しくなってきている。なにしろ、身内である民主党議員や党員から「そろそろ身を引く時なのではないか」との声が強まってきているからだ。

米時間17日、カリフォルニア州選出の連邦下院アダム・シフ議員(64)が「これは自身が決めることだが、 私は(大統領の)バトンを渡す時がきたと思う」と述べたのだ。シフ議員は民主党の重鎮の一人であり、党内からここまで明確に現職大統領に「もう辞めろ」との意思表示をしたのは同議員が初めてであり、議会内にもバイデン降ろしの声が醸成されてきていることを示すものである。

バイデン氏本人はいまのところ選挙戦から降りるつもりはないと繰り返しのべているが、本人もこうした声が日増しに強くなっていることは重々承知のはずで、私は8月に行われる民主党全国大会の前後で辞退の決断をすることになると踏んでいる。

そうなると、「もしトラから確トラ」が本当に現実味をおびてくる。