「バイデンは勇退すべき」の声

今月20日に81歳になったジョー・バイデン大統領。高齢であっても来年11月の大統領選挙にむけて着々と選挙活動を展開しており、本人はやる気満々である。現職ということもあり、民主党では現在向かうところ敵なしという状況だ。

米政治に特化したウェブサイト「FiveThirtyEight」の最新世論調査によると、党内でのバイデン氏の支持率は67.7%で、2位の作家マリアン・ウィリアムソン氏の7%を大きく引き離しており、独走状態が続いている。

ただこのところ、党内からは「やはり勇退すべきではないのか」との声が大きくなっている。歩く姿をみても、ポツポツとしか足を進められないといった様子で、当選してもあと4年間大統領を務められないだろうとの思いを抱く人は少なくない。

いま民主党内で議論がまき起きているのが、「バイデン氏が再選を望まないとしたらいったい誰を次期大統領候補にすべきか」という点である。出馬しているウィリアムソン氏は著述家として名前は知られていても、政治の世界では大きな期待はもたれていない。

バイデン氏勇退の場合、いまから若い候補を擁立することは難しく、民主党が今よりも有利になる可能性は極めて低いというのが共通する認識だ。となると、いまの副大統領のカマラ・ハリス氏を起用することがもっとも現実的なチョイスと言われているが、ハリス氏の支持率はCNN調査によれば33%でしかない。人気がないのだ。

本選挙でトランプ氏と戦った場合、民主党が勝てるチャンスはかなり低くなる。あとはカリフォルニア州のキャビン・ニューサム知事を起用するという手もあるが、トランプ氏を負かすことはできないというのが現時点での見立てだ。いずれにしても民主党は苦しい戦いを強いられることになる。さて、どうなるのか。

2024年大統領選:どちらが有利か

来年11月の大統領選は今後大きな波乱がなければ、バイデン対トランプの戦いになるが、現時点での2人の支持率はほぼ互角である。私がよく閲覧する「270towin」という、選挙に特化したサイトによるバイデン対トランプの二者択一の世論調査では、バイデン氏の46%に対しトランプ氏が44%である。この数パーセントの差異は今後1年でいかようにも変わるので、今後どう動くかに注視している。

私は1990年から現地で取材をしていたこともあり、大統領選へのこだわりはかなり強く、さまざまな視点から選挙を追ってきた。

バイデン氏は高齢であるが再選を望んでおり、民主党内での支持率は現在75%。大統領選では歴史的に現職が圧倒的に有利で、選挙資金も集まりやすい。最新の数字ではバイデン氏の集金額は9100ドル(約137億円)で、トランプ氏よりも上回っている。

ただ、大統領選は有権者の総得票数で争う選挙ではない。全米50州に割り当てられた選挙人をより多く積み重ねていく戦いで、選挙人の総数が過半数の「270」を獲得した候補が次期大統領となる。

たとえば、リベラル州として知られるカリフォルニア州の選挙人数は54。歴史的に民主党が同州を奪ってきており、現時点での数字はバイデン53%対トランプ30%で、もちろんバイデン有利である。逆に保守州であるテキサス州(選挙人数40)はトランプ45%でバイデン37%という数字だ。

ただ以前にも書いたが、「おじいちゃん対決」を脱して、夢のある未来を積極的に描ける若い候補に場を譲ることもアメリカらしさであり、個人的希望を述べれば、お二人には早めに退場してほしいと思うことしきりである。

来年の大統領選:バイデン有利の理由

今月21日に当ブログで、来年の大統領は「おじいちゃん対決」となり、面白味に欠けると書いた(やはりバイデンVSトランプになるのか)。ただ、どちらが有利かとの領域には踏み込まなかった。

今日(25日)、私の仕事場である日本外国特派員協会で、アメリカから来た大統領選のプロに会い、この点について踏み込んだ議論をした。ズバリ、彼はバイデン氏に決定的なアドバンデージがあると言った。

米有権者はもはや「おじいちゃん対決」になることを受け入れざるを得ず、二者択一という状況が避けられなくなると、高齢であるということは争点でなくなるという。バイデン氏は現在80歳、トランプ氏は77歳で、有権者の6割ほどはいま大統領に就任する人の上限は70歳が望ましいと答えているが、来年に限っては年齢の議論は無意味となる。

そうなるとトランプ氏が抱えている法的問題にまず関心が向けられる。共和党有権者ですら、24%がトランプ氏の法的問題の多さで「投票する可能性は低い」と回答しているのだ。これが無党派層になると64%が彼には一票を投じないとしておりバイデン有利となる。

さらに、バイデン氏は大統領に就任以来、超党派インフラ法を成立させ、全米の道路、橋、鉄道の補修、また高速インターネットの整備などを実現させてきた。また銃の安全対策を強化する銃規制法案を28年ぶりに成立させており、共和党議員からも賛同をえている。

長年米国選挙をみていると、いつの時代にも選挙の明暗を分けるのは中産階級の判断であることがわかる。トップダウンの決定ではく、「ミドルアウト」の手法を使えるのがトランプ氏ではなくバイデン氏なので、来年は「バイデン有利」で動くのではないかというのが彼と私の一致した見解だった。

やはりバイデンVSトランプになるのか

来年の大統領選投票日(2024年11月5日)まであと1年と少しになった。日本でも散発的に大統領選の報道はあるが、海外ネタはいまイスラエルとハマス、さらにウクライナのニュースに大きくウェイトが乗っているので大統領選関連記事は少ない。

一言で選挙の動向を述べると、「バイデン対トランプの戦い」ということになる。長年、大統領選を追っている者にとっては興味が削がれるほど面白みのない対戦であり、相手が決まってしまっているため、来年初頭からはじまる予備選の必要性がないといえるほどである。

民主党は現職バイデン氏の一強という流れで、いまから他候補が立候補しても時間的に厳しい。ロバート・ケネディ・ジュニア氏が唯一の対抗馬と目されていたが、今月9日に独立候補になったため、民主党では著作家のマリアン・ウィリアムソン氏が唯一のライバルになった。最新の支持率を眺めると、バイデン氏の70%に対し、ウィリアムソン氏は10%と低迷しており、ほとんど期待はもてない。

一方、共和党の方はトランプ氏が59%でトップ。2位にはフロリダ州デサンティス知事と元国連大使のニッキー・ヘイリー氏が8%の同率で2位。以下、元ニュージャージー州知事のクリス・クリスティー氏、前副大統領のマイク・ペンス氏、実業家のビベック・ラマスワミ氏が共に3%で並んでいるだけで、あとの候補は支持率1%前後で振るわない。

もちろん、あと1年の選挙期間があるので何があるかわからないが、このままいくと「おじいちゃん対決」になり、米国らしい「夢のある未来」を描けるような選挙ではなくなる。それが何よりも残念である。

トランプの支持率がいまだに高い理由

アメリカ大統領選の予備選(アイオワ州コーカス:2024年1月15日)が始まるまでにはまだ時間があるが、選挙活動はすでに活況を呈している。その中でも、共和党から出馬しているドナルド・トランプ氏の支持率が依然として同党ではトップで、このままの流れでいくと来年11月の投票日にはバイデン対トランプという「おじいちゃんの戦い」になる可能性が高い。

民主党の現職バイデン氏が再選を望むことは年齢を考慮しても「アリ」だろうが、共和党が再びトランプ氏を代表候補に推す意図がどうしても解せないのだ。これまで数々の暴言を吐いてきた人物であり、多角的に大統領としての適性を考えたときに、私の中には不適任という答えしかない。

それではなぜ共和党員たちはトランプ氏を担ぎ上げようというのか。最新のロイター通信の世論調査結果を眺めると、共和党指名争いで「トランプ支持」と答えた人は52%で、2位の デサンティス・フロリダ州知事は13% にとどまっており、トランプ氏が大きくリードしている。

トランプ支持者の多くはクリスチャンの白人男性で、近年は世間の関心が女性やマイノリティーにいきがちであるため、「自分たちこそが偏見の被害者である」との思いを強くしている。この思いこそがトランプ氏の政治家としてのキャリアのスタートで、白人男性の被害者意識がどれほどトランプ氏をもちあげているかは日本にいるとなかなか理解しづらい。

共和党有権者の多くがトランプ氏の非難を避けているということもある。ある世論調査では、回答者の3分の2は「白人男性こそがいまの米国ではもっとも差別されているグループ」と答えているほどだ。それを代弁してくれているのがトランプ氏なのだという。

さあ、トランプ氏はどこまで突っ走れるのだろうか。