副大統領候補:バンス氏が選ばれた理由

「やはりこの男は計算高い」

ドナルド・トランプ氏が米時間15日、副大統領候補にJ.D.バンス上院議員(オハイオ州)を選んだ時、脳裏にかすめた思いである。日本ではバンス氏の名前はほとんど知られていなかったし、米政界でも上院議員になって2年しかたっていない人物なので、大物とは言いがたい。それなのにトランプ氏が同氏を副大統領候補に指名したのには理由がある。

今年の選挙はここまで、支持率を眺めると、トランプ氏が数パーセントのリードを保っている調査が多いが、依然としてトランプ・バイデン両氏は接戦といって差し支えない。トランプ氏としては本選挙で、なんとかして現職大統領を突き放したいはずである。

しかも、トランプ氏は今回の選挙が中西部の一握りの激戦州で勝敗を決することがわかっており、重要州であるオハイオは落とせないとの判断から同州出身のバンス氏を選んだ可能性が高い。副大統領というのは大統領に不測の事態が生じた時には大統領に格上げされるが、それ以外は忠実な併走者という位置づけた。

あくまで「副」であり、自分よりも飛びぬけた才能がある人物である必要はないし、むしろイエスマンの方が大統領としては扱いやすい。そこで選ばれたのがバンス氏ということになる。

バイデンへの進言

The Biden-Harris Record | The White House
Photo courtesy of the White Houose

6月27日にアトランタ市で行われたバイデン大統領とトランプ氏とのテレビ討論会以降、バイデン氏の大統領としての能力に大きな疑問符がつけられているが、過去数日、これまで同大統領の「味方」であった人たちからも否定的なコメントが出始めている。

まずバイデン氏を「友人と思っている」とまで述べてきた俳優のジョージ・クルーニー氏が、匙を投げるコメントをした。ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、こうのべている。

「 私はジョー・バイデンを愛している。だが、我々には新しい候補が必要だ」と発言し、現在のバイデン氏に対して厳しい意見を投げた。クルーニー氏は3週間前に見たバイデン氏について、「もはや2010年に見たバイデン氏ではない。いや2020年のバイデン氏ですらない。年齢の問題だろう。このままでは今年11月の選挙で勝つことはできない」と否定的な見方をしている。そして、こうも述べる。

「これは年齢の問題だ。それ以上の何ものでもない。同時に、この問題を覆すことはできない。だからバイデン氏が11月に選挙で勝つことはできない。その上、下院でも勝てないし、上院でも負けるだろう。これは私だけの意見ではなく、個人的に話をした上院議員、下院議員、知事全員の共通する意見だ」

ここまではっきりと「バイデンは勝てない」と身内から発言されてしまうと、バイデン氏としては立つ瀬がない。やはり撤退する流れになる公算が強いと読む。

11月の米大統領選予想

米時間6月27日に行われたバイデン大統領とトランプ氏との討論会以降、同大統領の支持率が急落している(Trump Widens Lead After Biden’s Debate Debacle)。あの討論会を観たほとんどの人はバイデン氏の心許なさと脆弱さを感じたかと思う。アメリカという大国のリーダーとしてはもはや不適格なのではないかとの思いが強まった。

個人的には勇退すべきだと考えているが、本人は現時点ではまだまだやる気を見せており、すぐに辞めるという流れにはなっていない。周囲からの撤退の声には耳をかさず、「まだやれる」との判断なのだろうが、今後選挙戦から降りますという発表がなされる可能性は十分にある。

その時に誰が民主党の代表候補になるのか。

すでに予備選で多くの候補が脱落していったが、私が推すのはカマラ・ハリス副大統領である。バイデン氏が降りた場合、今年11月には「ハリス対トランプ」という戦いになるのではないかと邪推している。ただ結論を先に述べると、ハリス氏もかなり健闘するが、最終的にトランプ氏が返り咲くという流れになるのではないか。

これは個人的な希望とは逆である。できればハリス氏に勝ってもらい、「米史上初めての女性大統領誕生」というニュースをみたいのだが、「やはりトランプは強かった」という結果に落ち着くのではないか。これは30年以上も大統領選を追ってきた当方のハンチ(Hunch・予感)である。

72%の米有権者:バイデンは大統領として不適格

今朝(7月1日)、仕事場(外国特派員協会)にきてすぐ、ヨーロッパ出身の記者と二人で先週行われたバイデン氏とトランプ氏の討論会について話し合った。

彼がまず「あのディベート、どう思った」と訊いてきた。

私は率直に、「もはや2人ともにアメリカという大国のトップに座るだけの能力も資質ももちあわせていない。残念ながら、今年の大統領選はとんでもない人物を国家のトップに据えようとしている。考え直さないといけない」と述べた。

すると同僚もしごく同意し、「今からでも遅くないから、民主・共和両党は新しい候補を擁立した方がいい」と提案。3億3000万強もの人たちが住んでいるアメリカで、よりによって80歳前後の高齢者を両党の代表者に選んでしまったことは、皮肉といって差し支えない。

春先から予備選を行い、多くの候補が脱落していって2人が残ったわけだが、こうしたプロセスが本当に適切だったのかどうかを改めて考え直す必要があるだろう。現職バイデン氏は明らかに認知能力に限界がきているし、本人もそれを認めている。CBSニュースの世論調査では、72%の有権者がバイデン氏は大統領として不適格と回答している。これまで多年に渡って最適任者を選択するシステムが機能してきたと思っていたが、考え直す時期がきているだろうかと思う。

50歳前後で知力、体力が充実した有能な男女は数多くいるはずである。そうした人物を大統領候補に選出できなかったことは、この大統領選のプロセスに欠陥があることを証明しているのではないか。この点でも同僚と意見が一致した。本当の意味での「アメリカらしい変革」を実現してほしいと思う。

TV討論会: バイデンvsトランプ

二人は握手もせず、最初からずっと敵愾心をむき出しにしていた。心の中を覗いたら、信じられないような過激な言葉が隠されていたかもしれない。

米時間27日午後9時からジョージア州アトランタ市で始まったジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ氏のテレビ討論会。米国の大統領選には選挙期間が設けられていないため、長期間に渡って選挙活動を続けられるが、現段階ではすでに米有権者の8割がどちらに投票するか決めているといわれる。

討論会では経済問題から移民問題にいたるまで多くの議題で論戦が繰り広げられたが、相互に言いたいことを言い合う場面がほとんどで、議論が噛みあわない。バイデン氏は今回、1週間前から特訓を重ねていたが、声はかすれ、沈黙があったりと精彩を欠いた印象は否めない。

けなし合う場面も多く、トランプ氏が「あなたがやってきたこと、過去のことも含めて、もはや完全に犯罪だ」と糾弾すると、今度はバイデン氏が「あなたの言ってことのすべてがウソだ」と捲したてる。

私は1984年のレーガン・モンデール両氏の大統領選を現地でみて以来、ずっと追っているが、これほど明け透けに両者がけなしあった討論会はなかったかもしれない。それほどお互いの感情がむき出しになり、「両者ともに大統領という公職には相応しくないのではないか」と思ったほどである。しかも80歳前後のご高齢で、「若く、バイタリティーに溢れた候補はどこにいったのか」というシンプルな疑問が湧き上がってきて、今年の選挙にはいくつものクエスチョンマークがついている。