菅首相がやるべきこと:新型コロナ(38)

菅氏は先週、緊急事態宣言の効果について「人流については間違いなく減少している。効果は出始めてきているのではないか」と発言したが、その発言が感覚的で、しかも的外れであったことは、いま首相がもっとも痛感しているのではないか。

首相発言をうけて、ヤフーは「緊急事態宣言の効果は出始めていると思いますか」とネット上で問うと、日本時間5月9日午後3時40分現在、約36万6000人が回答を寄せ、94.1%が「効果が出ているとは思わない」とした。心情的には「菅さん、いったいどこを見てるんだよ!」という思いである。

菅政権のコロナ対策はあまりにも漠然としており、いまになって「1人1人が意識を持って行動し、マスク、手洗い、3密の回避という基本的な予防策を徹底するよう、改めてお願い申し上げます」(7日)と発言したことに、違和感さえ持ってしまう。

いま必要なのは、たとえば東京では「新規感染者数を何月何日までに100人以下にします」とか、「ワクチン接種を6月15日までに37%の国民に接種します」といった明確な数値目標であり、それに向けての努力である。菅氏の発言はあまりにも漠然としすぎており、真剣さの不足を感じると同時に、周到に練りこまれたコロナ対策ができていないと考えざるをえない。

すでに1年以上もコロナが蔓延しており、首相が強い意志と行動抑制、ワクチン接種の具体的な数値をださない限り、国民はなかなか感染予防に真剣になれないのではないか-。

状況は悪化している:新型コロナ(37)

ニュースを見聞きしている限り、昨日と今日(5日、6日)の東京都の新型コロナウイルスの新規感染者がそれぞれ621人と591人だったことから、少しばかりの安堵が広がっているかにみえる。5月1日には陽性者数が1000人を超えていたので、落ち着いてきたとの見方があるが、私はむしろ状況は悪化していると思っている。

理由は2点ある。一つはこれまでも当ブログで述べてきたとおり、昨日と今日は単に検査数が少なかっただけで、その中での陽性者数にすぎないからである。テレビも新聞も感染者数は報じるが、検査数はほとんど報じない。たとえば4日のPCR検査人数は6585人、5日は5513人である。ところが、陽性者数が1000人を超えた5月1日の前日である4月30日の検査数は8230人である。

当たり前だが、いまの社会状況ではより多くの人を検査すればより多くの感染者がでる。仮に東京都が1日20万のPCR検査をする体制を整えたとしたら、いったいどうなるのか。

もう一つの理由が陽性率の悪化である。これは東京都が開設している「新型コロナウイルス感染症対策サイト」を眺めれば一目瞭然で、ゴールデンウィーク中は検査数が減って感染者数も減ったが、実は陽性率は上がっているのである。

これは危機的状況といってもいいかもしれない。5月5日の陽性率は8.8%である。ところが1週間前の4月28日の陽性率は6.5%。この1週間で急に悪化している。たとえば4月1日の陽性率は4.2%であり、3月1日の陽性率は3.3%だったので、上昇しつづけている。単純計算では、2カ月ほど前は100人のうち感染者は3人だったが、今は9人になったということである。全国ではなく東京都の数字だが、状況は確実に悪化していると言えるだろう。

菅首相はこの状況を正確に国民に伝えるべきである。

菅会見で思うこと:新型コロナ(36)

昨夜(23日)、菅総理が新型コロナについての記者会見を開いた。施策が後手後手に回っているのは昨年からであり、どういった質疑応答をするのか気になってライブ映像を観たが、菅氏がこれから遅れを挽回できるとは思えなかった。

現時点で最も重要であるはずのワクチンの接種も、次のような発言を耳にして愕然とするばかりである。

「6月末までには合計1億回分を配布できるようにいたします。その上で、接種のスケジュールについては、希望する高齢者に、7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終えることができるよう、政府を挙げて取り組んでまいります」

ワクチンについては治験が重要であり、時間がかかることは十分に理解しているつもりだが、それにしても動きが遅い。昨秋あたりに菅氏がみずから動いて、ワクチンを確保すべきであったのに、ファイザー社のCEOに電話で直接要請したのは先日渡米した時である。これでは日本国内の感染者が増え続けていくわけである。

ニューヨーク・タイムズがまとめた世界各国・地域のワクチン接種状況をながめると、日本はかなり下位に位置している。日本の数字は1.9%。人口の1.9%だけが接種されているというのは、先進国としては恥ずかしい。日本と同率に並んでいるのはミャンマーとラオスで、トーゴ(2.0%)や北マケドニア(2.1%)よりもワクチン接種率は低い。

逆にトップはインド洋に浮かぶセーシェルで、現時点でのワクチン接種率はイスラエルの60%よりも高い69%。イギリス50%、アメリカ41%、ドイツが22%という数字である。菅氏は「7月末を念頭に各自治体が、、、」といった悠長な話をしているが、菅氏の表情と言葉使いを見聞きするかぎり、鉄をも溶かすほどの情熱を感じないのは私だけだろうか。

感染爆発が起こらないことを切に祈りたい。

検査数を増やすべき:新型コロナ(35)

今月8日、当欄で「日本の感染者数が少ない理由:新型コロナ(34)」というブログを書いた。同じような内容になってしまうが、いま私が愚考しているのは、日本の潜在的コロナ感染者は数字で示されるよりはるかに多いのではないかということである。

いま東京も大阪も新規感染者数が増えつづけている。東京は今日(21日)の感染者数が843人で、大阪は1242人。すぐに収束する気配はない。メディアに出てくる数字は感染者数であって、分母にあたる検査人数はネットなどで調べないかぎり同時に公表されることは少ない。

検査数が一定でない中での「減った」「増えた」なので、こうした状況での一喜一憂はほとんど意味がないかと思う。東京であれば、検査数は1日多くて1万人超で「しかない」。8日のコラムでも述べたが、アメリカの検査数は日本の10倍以上で、たとえば東京都と比較される大都市ニューヨーク市ではいま、1日13万人から14万人の検査をしている。その中での新規感染者が4659人(20日)という数字で、検査数は過去1週間平均で約14万5000人(ニューヨーク・タイムズ紙)だ。

すでにコロナ禍に突入して1年以上がたつ中、日本はどうしてニューヨークと同じレベルの検査数をこなせる体制を確立していないのか。「していない」というより、単に「してこなかった」だけの話なのではないかとも思ってしまう。もし東京で1日10万人以上の検査を実施していたら、新規感染者は8000人くらいに増える可能性がある。

なぜ日本は検査数を増やさないのだろうか。多くの方は同じことを考えるはずで、1年以上もたっていながら「増やせない」というのは行政の怠慢でしかないだろう。行政側が故意に検査数を抑えているとは思いたくないが、地方自治体だけでなく、日本政府はいち早く全国民に対して無料の検査とワクチン接種を実施しなくてはいけない。

日本の感染者数が少ない理由:新型コロナ(34)

新型コロナウイルスが蔓延し始めてから1年以上がたつが、私がずっと「なぜだろう」と思っていたことがある。それは日本の感染者数が欧米諸国にくらべるとずっと少ないことである。

日本以外の国でもほとんどの人は外出時にマスクを着用し、故意に他人に感染させたりする人などほとんどいないにもかかわらず、対アメリカ比で数字を見ると圧倒的に少ない。世界でもっとも感染者の多いアメリカは4月7日時点で、累計で2975万人以上が感染している。日本は累計で49万超なので、日本の人口がアメリカのおよそ3分の1ということを考慮しても、日本の感染者数はかなり少ない。というより、アメリカが多すぎると言うべきかもしれないが、何がこの差を生むのだろうか。

昨年から医学界で論じられているのは、日本人を含めたアジア人の多くが以前アジアで大流行した SARSやMERSのウイルスに晒されて、抗体をもっているというものだ。 SARSやMERSも新型コロナウイルスと同じ仲間の1本鎖RNAウイルスなので、多くの方がすでに新型コロナに効力を持つ抗体をもっているという説である。それが本当であれば、日本人としては嬉しいことだが、感染者数が少ないことに関連した別の話もある。

またアメリカとの比較で恐縮だが、日本のPCR検査数が圧倒的に少ないことである。アメリカのPCR検査数は4月7日の1日だけでも117万59件に達している。日本(4月5日)は4万1770に過ぎない。人口差を考えてもあまりにも少なすぎる。

7日のアメリカの感染者数は 4万1835人、一方の日本は3451人である。陽性率はアメリカが3.5%で日本は8.2%。日本側の数字は厚労省のオープンデータからで、アメリカ側は非営利団体「コロナウイルス・トラッキング・プロジェクト」という団体のものだ。日本政府が予算と機動力を発揮して1日30万件くらいのPCR検査を実施した場合、感染者数はどれほどになるのか。

日本はワクチンの接種数も悲惨なくらい少ないので、菅氏だけでなく地方自治体のトップには、PCR検査もすべての国民が今後複数回受けられるくらいの計らいを願ってやまない。