アッパレ羽生

五輪3連覇を目指していた羽生結弦がメダルを逃した。ショート・プログラムの時、冒頭の4回転サルコーで穴に乗っかったことで満足に飛べず、大きな減点になった。「フリーで挽回できるのでは」と多くの人は期待した。私もその1人だった。

10日のフリーの演技の冒頭で勝負の4回転アクセルを跳んだが、綺麗に着氷できず、結果は4位に終わった。

実は私は以前から羽生が「ニガテ」だった。「あまり好きではない」と言った方がいいかもしれない。仕事で羽生を取材したことはないが、テレビを含むメディア報道からつたわる言動から、積極的に応援したいと思ったことはなかった。しかし今回、ショート・プログラムの後、「アッパレ羽生」といえる羽生の言動をみた。

まず成功したことのない4回転アクセルを五輪という晴れ舞台でやり遂げるという意気込みを強く感じた。これまでの経験から、本人も失敗する可能性の方がはるかに高いことを知っていたはずである。失敗すればメダルは望めない。けれども、アクセルを飛ぶことに意義を見出し、挑戦しつづける姿勢こそが自分らしさであるという判断のもと、果敢に挑戦し続けた。

試合後、荒川静香のインタビューで「いやあ、正直悔しいですよ」と本音を漏らしたあと、「もう右足の感覚ない状態でやっていましたけど、でもだからこそ出来たのかなって思いますし、本当に体のケアも含めて色々な方に力を頂いてそしてたぶん色々神様にもお力を頂いて、やっと僕のあの演技があったと思うので、本当みなさんに感謝したい」とコメントしたのだ。これには胸を打たれた。

いまはこれからも滑り続けて、世界最初の4回転アクセル成功者になってほしいと思う。(敬称略)