ふとした思い・・・

私はいま63歳である。フリーランスのジャーナリストとして独立してから30年になる。フリーの立場なのでもちろん定年はなく、仕事はこれからもずっと続けていられるが、周囲を見渡すと、いつの間にかほとんどの社会人が私よりも年下になっていることに気づき、愕然とさせられることがある。

私は自分の年齢をほとんど気にせずにこれまで仕事をしてきたが、最近になって、仕事仲間と一緒にいたりオフィス街を歩いているときに「最年長かもしれない」と思うようになった。それだからといって仕事を辞めるわけではないが、本当に「いつの間にか」という言葉を強調したいくらい知らない間に歳をとってきた感じがある。

会社員ではないので年次を意識する縦社会に身をおいていないこともある。だが老年というカテゴリーの中でどこまでやっていけるのかという、つかみようのない焦燥が訪れたりする。

記憶力も落ちてきた。妻と以前に行ったレストランの名前どころか、行ったことさえ覚えていないこともある。「認知症か」という恐怖があたりを浮遊し始めるのも私の世代だろう。いまの地点から今後、どこまで飛躍できるのか。自分を試すという意味で、これからは人生を楽しむしかないとも思っている。