フェリックス・ヴァロットン

丸の内にある三菱一号館美術館で開催していた『画家が見たこども展』が今日で終わる。私は少し前に足を運んで、ポスト印象派にあたるナビ派の作品を観てきた。

その中でもヴァロットンの作品が以前から好きで、誰しもが抱える心の奥底の闇を絶妙なタッチで表現できる力に魅了されてきた。

この作品は「女の子たち」というタイトルで、1893年に創られた木版画である。今回、写真撮影が許された作品の一つである。描かれた女子たちの表情が絶妙で、決して素直な目をしていないところが興味深い。

実は三菱一号館美術館は2013年にも『近代への眼差し:印象派と世紀末美術』という展覧会を開き、ナビ派の作品を展示している。その時の自分の感想を読み返すと、いまとほとんど同じことを感じているので少し抜粋したい。

《多彩な色と光を駆使した印象派とは対照的に、ヴァロットンやルドンの作品には人生の暗部をモノクロで表現した悲哀があり、同じ時期のフランスに、ここまで真逆の心模様を表現しようとした画家たちがいたのかと思い知らされるのである。

ルノアールの肉感的な裸婦画を観たあとにルドンの石版画を眺めると、陽光の差すセーヌ川の水遊びのあとに、陰鬱な自室にもどって現実の生活に対面するような落差を感じざるをえない。いつの時代にも陰と陽があるように、印象派の絵画で溢れかえっていると思っていたフランスの19世紀後半にも、物憂げな思索を表現したアーティストがいたのである。

ヴァロットンの木版画は秀逸である。日本のアニメの源泉に触れるような気がした。》