孤独の時代

数日前、米誌『タイム』を読んでいると「孤独という疫病」という興味深い記事があった。

新型コロナウイルスの蔓延によって在宅の人が増え、一人暮らしの人にとっては必然的に人と会う時間が減り、以前よりも孤独を感じる人が増えているという内容だった。しかもアメリカでは年を追うごとに独身者の割合が増えており、家族がいなければ孤独感に襲われる割合は高くなる傾向がある。

記事の冒頭で、41歳の女性教師の話がでていた。ミズーリ州に住むHさんは離婚を経験し、今は一人暮らしだ。子どもはいない。コロナの前はひとり暮らしを満喫し、自分の時間を自由に使える気楽さに喜びを感じていた。ところがコロナによって人との接触が減り、夜間ひとりでいる時にどうしようもない孤独感に苛まされるようになった。

「笑顔でいる日もありますが、クッションを抱きかかえて、この状態が長く続いたらメンタル的にもつだろうか、あと1年、いや数ヶ月いけるだろうか」

いまアメリカ人でひとり暮らしをしている人は3570万ほどいる。また「孤独感を以前よりも感じていますか」という質問に「ハイ」と答えた人は61%にのぼっている。アメリカ人の一般的な印象は「おしゃべり好き」で「陽気」で「快活」というものかもしれないが、実は以前から孤独に悩む人は少なくなかった。内面は意外に脆く、精神科医にかかっている人も多い。

1971年に桐島洋子氏が「淋しいアメリカ人」を著して大宅壮一ノンフィクション賞を獲った時代から、実は孤独な人が多いことは知られていた。ただ過去数カ月、コロナによって孤独感を募らせている人が増えたことは事実のようだ。

タイムの記事では最後に、コロナを利用して孤独というものをもっとオープンに語れるようになればいいと結んでいたが、孤独というものを理知的に理解しても本質的な孤独感は解消できないだろう。それよりも、実質的な人との触れ合いの時間をもつことこそが重要で、これはほとんどの方がすでに承知していることでもある。あとは本人がどう動くかにかかっている。