トランプは負けるべき

全米の都市がいま騒然としている。騒然というより「壊乱」という言葉の方が適語かもしれない。

ミネソタ州の路上で白人警察官デレク・ショーヴィン被告に殺害されたジョージ・フロイドさんの事件は、黒人と白人の根深い対立をふたたび光のあたる場所に晒すことになった。

黒人のなかには1619年からほぼ400年間、アメリカ社会は「何も変わっていない」と主張する人たちもでてきた。1619年というのは、アフリカ人が初めて奴隷としてアメリカ本土に連れてこられた年である。その間、黒人たちは前へ進んでは戻され、そしてまた前進しては後退するということを繰り返しながらここまできた。

オバマ大統領が誕生したとき、黒人の周囲にあったバリアはかなり低くなったが、アメリカ内部に目を向けると、いまでも今回の事件のように黒人が理不尽に殺害される事件はあとを絶たないのが現実だ。

今回は幸いにも撮影された動画がネットに流れたことで、多くの人が知ることとなった。それにより、心の奥にしまわれていた一部の白人への猜疑と憎悪が通常より何倍も増幅されることとなった。

壊乱は多くの都市で収拾がつかなくなっているため、トランプ大統領は州知事たちとのカンファレンスコールを開いて、こう告げた。

「あなた達は弱虫だ。(デモ参加者を)逮捕しなくてはいけない。奴らは過激派で無政府主義者なんだ。(政府が)制圧しないと、やられるだけだ。何もしないとアホに見えるだけだぞ」

対立を激化させることに腐心するトランプ氏。アメリカ内部に隠れていた亀裂が鮮明化して、白人と黒人の対立はより深まっている。それを煽るような発言は、大統領としてもっとも避けなくてはいけないのだが、この人は構わない。

これまで私はジャーナリストとして、トランプ大統領についても客観報道を心がけてきたつもりだが、今回ばかりは個人的意見がそれを上回る。

トランプは11月の選挙で負けるべきである!