2020年米大統領選(30):消極的選択

米時間3日に行われたスーパーチューズデーで、14州のうち10州でジョー・バイデンが勝利を確実にした(日本時間5日午前)。バイデンの躍進は予想外だった。アメリカのメディアや政治評論家もバイデンの盛り返しは読めなかったとして「Resurrection(復活)」という言葉を使っている。私も読めなかった。

予備選最初の2州であるアイオワとニューハンプシャーでは4位と5位という順位で、得票率もそれぞれ15.6 %、8.4%と振るわなかった。ニューハンプシャーに取材に行って米人記者たちと話をした時、「バイデンはもう終わる」という話がでていた。

というのも、すべての有力候補は昨年から2州で多大な時間と資金を費やし、同じように選挙運動を展開してきた中での4位と5位だったからだ。それがバイデンの今の力であると誰もが判断した。たぶん本人もそう考えていただろう。

ただ2月29日のサウスカロライナでは善戦できると思われていた。黒人票を期待できたからだ。予想通り1位になったが、スーパーチューズデーの諸州でここまで勝てるとは予想していなかった。

そこには理由がある。バイデンが10州でトップにきたのは「消極的理由」からだと私は考えている。有権者は積極的にバイデンを選んでいないのだ。スーパーチューズデーを前にしてピート・ブダジェッジとエイミー・クロブシャーが選挙戦から退いたため、2人に投票しようとしていた穏健派は「あとはバイデンしかいなかったから」という理由で票を入れたというのが真相だろう。

ブダジェッジ、クロブシャーを推していた有権者が左派のサンダーズに乗り換えることは考えにくい。消去法が使われて、最終的にバイデンが残ったという図式である。まあ理由はどうであれ、勝ちは勝ちに違いないが、後ろ向きの理由で勝ち進んだ候補という印象はぬぐえない。今後はサンダーズとの一騎打ちになる。(敬称略)