トランプはいまにも米連邦下院で弾劾訴追されようとしている。当欄ですでに記したように、下院で弾劾決議案が通過しても、上院での弾劾裁判では無罪になることがほぼ決まっており、トランプがホワイトハウスを追い出されることはまずない。だがトランプの心中は穏やかでないようだ。
日本時間19日未明に行われる下院本会議場での採決を前に、トランプはいてもたってもいられなかったらしい。下院議長のナンシー・ペロシに6ページにおよぶ怒りの書簡(写真)を送っている。トランプ本人ではなく、スピーチライターが書いたものであろうが、もちろん本人も読み、納得したので直筆のサインをしている。
「この弾劾は民主党議員による前例のない非合法な職権の乱用であり、アメリカの250年におよぶ憲政史上でも類を見ないことである」と述べている。この段落の「民主党議員による」の部分を「トランプ大統領による」に代えて、そのままそっくりトランプにぶつけてやりたいくらいである。トランプこそが職権の乱用を犯したことを理解しなくてはいけない。
トランプを弾劾訴追しなければ、将来の大統領が「これくらいのことはやって構わない」と思うことになり、断固として弾劾手続きを進めるべきである。
だが党派対立による数の論理によって罷免できず、年明けに笑うのは結局トランプだったという結論になりそうである。(敬称略)