イチロー引退

「そうか、やっぱりか」

21日夜、マリナーズ対アスレチックスの試合をテレビで観ていると、試合後にイチローの会見があるとの一報が入った。

本当に50歳まで現役でいられるのではないかとの期待があった一方、打てなくなっていたので「いよいよ決断をしたのか」との思いが去来した。

たくさんの記録がある中で、私は日米通算で4367安打という数字が抜きん出てすばらしいと思う。アメリカでは日本のプロ野球の安打数を入れるべきではないという人もいるが、もはや説得力のない言説でしかない。

世界最多安打の記録はもしかしたら今後、破られることはないかもしれない。それほどの偉業だろう。

ただイチローに対しては、少しばかり「嫌みな男」という印象をもっていた。本人も「人望がない」と会見で述べたとおり、斜に構えて距離を置くようなところがあったように思う。

それは昨年5月、大谷翔平とイチローがグラウンドで初めて顏を合わせた時にも見られた。駆けよって挨拶をしようとした大谷を、イチローは避けるようにかわして走り去った。もちろん直後に握手を交わすが、わざわざ挨拶にきた後輩に一瞬だけだが背をむける行動にイチローらしさが見てとれる。

素直に自身の気持ちを表すことへの抵抗なのか、あるものをそのまま受け入れることへの羞恥なのか、それとも潜在的な異種の意識なのかはわからない。

また会見でTシャツについての質問がでた時、「粋とは自分では言えないですけど、無粋であることは間違いないですよね」という返答もイチローらしさが出ていると思った。その裏には「そこまで俺に言わせるの?」という情動がある。

無粋という言葉からは、野球選手として、男として常に粋でなくてはいけないという強い思いも感じる。そうした意識を持ち続けたからこそ世界一に到達したのかとも思う。

「本当にご苦労さまでした」という言葉と同時に、今後のイチローの歩む道にも注目していきたい。