カダフィの呪縛

ベトナム、ハノイでの米朝首脳会談が28日、決裂した。理由はトランプが北朝鮮の「完全な非核化」を見据えて会談に臨んでいる一方、金正恩は「限定的な非核化」しか念頭になかったという点に尽きるかと思う。

その上で金正恩は経済制裁の解除を求めてきたため、何も合意せずに席をたったということである。

昨日午前中の顔合わせでは、両首脳の表情は悪くなかったし非核化に向けてのプロセスを段階的に踏むようにも思われた。だが、会談決裂というニュースを聴いて、私は金正恩が「カダフィの呪縛」から抜けだせていないと感じた。

どういうことかというと、2011年に殺害されたリビアのカダフィ大佐の二の舞になりたくないとの思いがいまだに強いということだ。

2003年、カダフィは核放棄を宣言して査察団を受け容れる。06年にはアメリカとの国交正常化も達成するが、ジャスミン革命の影響から、リビアには民主化の波が押し寄せて独裁体制が崩れてカダフィ体制は終わるのだ。

リビアや北朝鮮のような小国は核兵器を手放した時点でアメリカのような大国に飲み込まれ、体制転覆の運命に晒されるということだ。この思いは金正恩の父親も抱いていたはずで、こうした点から北朝鮮は今後も核兵器を手放す可能性は極めて低いと言わざるをえない。CIAをはじめとするアメリカの情報機関が分析してきた通りである。

金正恩は昨年6月12日、トランプと交わした合意文書に最初から従う意思がなかったということである。文書には4つの合意内容が記されており、3番目に「完全な非核化」という言葉がある。金正恩も署名したわけだから、最初からウソだったということになる。

アメリカはあくまで完全な非核化を目指しているため、今後両国がどういう姿勢で臨むのか、いまはまだ曖昧なままである。(敬称略)

2.18.19ワイドスクランブル

2月28日のテレ朝『ワイドスクランブル』(友人M氏撮影)