イギリスのEU離脱の意味

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イギリスのEU離脱の意味をどう捉えたらいいのだろうか。

ヒトコトで言うならば「政治と経済のせめぎ合いで政治が勝った」ということだろうと思う。

どういうことかというと、過去20年以上、世界は経済分野では共通のルールや価値観を共有する動きを加速させてきたが、政治分野では国家の自治権や独立する意識の高まりによってむしろ分裂する動きが強く、今回は政治に軍配があがったということである。

世界史を紐解いても、国家は分裂・独立していく方向のベクトルに力をもたせてきた。政治判断というより、民族自決的な意味合いと、精神的な自立によって国家数は増え続けている。ドイツの統合は例外である。旧ソ連の瓦解による地域国家の誕生やインドネシアから独立した東ティモールのように、今後は増え続けて国家数は200を優に超えてくるだろう。

だが、経済は国家間の枠を越えて、統合・融合の流れが加速している。EUはまさにそうだった。大きな経済圏をつくることで経済活動がより活発化され、物流や消費が増えて経済成長を促進してきた。

20年ほど前にNAFTAと言われる北米自由貿易協定が結ばれたのも同じ理由だ。カナダ、米国、メキシコの3国が貿易面では基本的に関税をなくして物品の行き来を自由にした。TPPも同様で、それによって経済的な利点が生み出される。もちろん弊害もある。

経済という枠組みでは、世界は1つになろうとしてきた。それとは逆に、政治という人の営みにおいて、世界は個別化する流れに乗っているのだ。

政治・経済という2分野は、ベクトルの向きでは逆であることが多い。どこかに歪みが生じやすい。

そうした観点では、イギリスのEU離脱は自立性の勝利である。経済的にはマイナス点が多いが、それが国民の選択だった。将来、TPPが発効した後に日本が抜ける場合、選択肢は国民にあることを教えてもいる。