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by the White House

先日、都内で退役米軍将校と会食をした。在日米軍に長く勤務した元将校は、「米軍の見解ではない」と前置きしたうえで言った。

「正直に申し上げれば、普天間飛行場は必要ないです。辺野古への移設という問題ではなく、極東アジアの戦略上、沖縄に米海兵隊はいらないのです」

決して新しい論点ではない。しかし退役したはいえ、米軍の元将校が海兵隊不要論を述べた点で興味深い(米国も実は不要と思っている普天間基地 )。

心に貼りつく絵

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知人の画家、高橋常政が東京都中央区京橋の画廊(ギャルリー東京ユマニテ)で個展をひらいている。

以前から書いているが、私は友人や知人であっても自身が納得しない限り当ブログには取り上げないことにしている。だからレストランや個展、イベントの紹介はほとんどしていない(かなりエラソー)。

「書いてください」と頼まれると、まず書かない。そうしたスタンスは、ジャーナリストとして客観性を保つ上で重要だと考えている。ただ今回は違う。

上の絵は動物の涅槃図である。4月に巣鴨にある蓮花寺に奉納されるふすま絵で、高橋は無報酬でこの仕事をやり遂げた。一見すると、寺の和室の絵として本当にふさわしいのか、との疑問をいだくが思いやりに溢れた絵である。

故人を偲ぶために集まったひとたちに楽しんでもらう意図があり、暖かさが伝わる。法要に集まった親族は、とかく会話に滞りがちだ。ましてや子どもは退屈きまわりない。

しかし、動物が描かれていれば、そこから会話が始まる。象の鼻の上にはテントウムシが乗る。アフリカなのかと思うと桜の木が植わり、犬やニワトリがいる。

四国から和紙を仕入れ、墨で濃淡をつけた絵は一瞬にして観る人の胸中に入りこむ。

絵画の優位性というのは、人間がいだく一瞬の驚きと感嘆をどこまで持続できるかなのだと思っている。この点で高橋の絵は、しばらく心に貼りついたまま剥がれない。

これが高橋常政という画家の力量なのだろうと思う。(敬称略)

リー・クアンユーの死

「緩やかな独裁」を貫き通したシンガポールの元首相リー・クアンユーが他界した。

成し遂げた成果に注目すれば「独裁者」という言葉はあまりに一面的で、氏の全体像を言いあらわしていない。それは、ある激情型の年配者を「怒りっぽいオヤジ」とだけ言って、その人のやり遂げた仕事や、実は他人に対して驚くほどの優しさをもっていたといった側面を無視することに似ている。

もちろん31年間も政権トップにいたことで、権力に固執する姿と政敵を除外しつづけてきた強権的な政治力には疑問がつく。いまの権力者であり息子のリー・シェンロンにも受け継がれている点だ(政治システムに完璧なし )。

民主主義の前に、国民の社会福祉と生活の安定を掲げたことで、いまは1人あたりのGDPは日本よりはるかに上をいく。経済力を含めた国力を高めるという点で、シンガポール型の国家資本主義はすべての国民の意見に耳を傾ける民主主義より即効力がある。

こうした点はすでに多くの学者が指摘している。「21世紀に資本主義はもう十分に機能しないかもしれない」という仮説がさかんに取り沙汰される起点にもなっている。

それでは日本が真似をできるかといえば答えは「ノー」だ。日本には日本流の国家の成り立ちがあり、社会規範が根づいている。いまさら少数意見を無視して、半独裁の政権など誕生するはずもない。

有楽町の日本外国特派員協会に行くと、よく知るシンガポール出身の記者が原稿を書いていた。「緩やかな独裁者」について話を聞くと、以前リー・クアンユーにインタビューしたことがあるという。

「いまのシンガポールは彼なくして 成立していないので、功績を大いに認めています。国民はいろいろと不満があるでしょう。でも彼の成し遂げた実体はあまりにも大きい。ほとんどの国民は感謝していると思います」

本音だろうと思う。大統領ニクソンから歴代のアメリカ大統領と対等に話をするだけでなく、アジア政策で助言もできるような政治家は日本にはいない。たぶん今後も現れない。

歴史の灯がまた一つ消えた。(敬称略)

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シンガポール、マーライオン公園の「ちびマーライオン」。大きなマーライオンは写真の左手奥(写っていない)に位置しています。

高校生国際会議

3月21、22両日、東京秋葉原で高校生国際会議というものが開かれている。今年で4回目だ。

主要メディアにはほとんど取り上げられていない。というのも、会議で世界が驚くような議題が話されているわけでも、仰天するような新しいアイデアが飛び出すわけでもないからだ。

それでも現役の高校生約80人が自らの意思であつまり、「国際問題を考える」機会をつくりだしている。しかも、企画から運営まですべ  て高校生がこなしている。

講師として来て欲しいと声がかかったのは昨夏のことで、十分な準備期間をとって万全の態勢でのぞんでいた。

最初は、会議の監督者として先生か企業人がいるかと思ったが、本当に最初から高校生だけで企画し、運営していたので驚いた。パンフレットもプロ並みのものを用意していたし、メールでのコミニュケーションや会議の流れも申し分ない。

しかもグループごとに、1つのテーマを5時間以上も議論して独自の解決策を提示するのである。並の高校生ではない、と思って参加者に訊いてみた。

「いまの高校生で国際問題を真剣に考えている人は全体の5%しかいません」

誰に強要されるわけでもなく、こうした場に積極的に参加してくる少数派の高校生は確実にいる。日本の未来は彼らのような人たちが背負っていくかと思うと嬉しくなった。

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世界中に悪名をとどろかせている過激派組織「イスラム国」。2014年6月に“イスラム国家”の樹立宣言をして以来、イラク、シリア両国で強い勢力を維持し続けている。

これに対峙するイラク軍はどれほどの力を持っているのだろうか。今後、イスラム国を駆逐できる強さがあるのか。

イラク軍の兵士数は約25万と言われている。一方、イスラム国の戦闘員数は複数の調査機関の情報を総合すると、多くて5万人。米中央情報局(CIA)の推測では最大で3万1500人でしかない(イスラム国に負けたイラク軍が弱かった理由)。

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