心に貼りつく絵

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知人の画家、高橋常政が東京都中央区京橋の画廊(ギャルリー東京ユマニテ)で個展をひらいている。

以前から書いているが、私は友人や知人であっても自身が納得しない限り当ブログには取り上げないことにしている。だからレストランや個展、イベントの紹介はほとんどしていない(かなりエラソー)。

「書いてください」と頼まれると、まず書かない。そうしたスタンスは、ジャーナリストとして客観性を保つ上で重要だと考えている。ただ今回は違う。

上の絵は動物の涅槃図である。4月に巣鴨にある蓮花寺に奉納されるふすま絵で、高橋は無報酬でこの仕事をやり遂げた。一見すると、寺の和室の絵として本当にふさわしいのか、との疑問をいだくが思いやりに溢れた絵である。

故人を偲ぶために集まったひとたちに楽しんでもらう意図があり、暖かさが伝わる。法要に集まった親族は、とかく会話に滞りがちだ。ましてや子どもは退屈きまわりない。

しかし、動物が描かれていれば、そこから会話が始まる。象の鼻の上にはテントウムシが乗る。アフリカなのかと思うと桜の木が植わり、犬やニワトリがいる。

四国から和紙を仕入れ、墨で濃淡をつけた絵は一瞬にして観る人の胸中に入りこむ。

絵画の優位性というのは、人間がいだく一瞬の驚きと感嘆をどこまで持続できるかなのだと思っている。この点で高橋の絵は、しばらく心に貼りついたまま剥がれない。

これが高橋常政という画家の力量なのだろうと思う。(敬称略)