オバマに望むこと

バラック・オバマが広島で17分間のスピーチを行った。当初は5分前後の所信を述べるだけと伝えられていたので、思いのほか長かった。

「・・・人類はあと戻りのできない価値を携えています。すべての人間は同じ家族の一員であるということを述べなくてはいけません。だから今日、広島の地にきたのです。・・・広島の人たちはもう戦争は望まないでしょう。戦争よりも、日々の生活をよりよくしてくれる科学に身を寄せるはずです・・・(原爆が投下された日)世界は広島で、永遠に変わったのです。広島の子供たちは今後、平和に日々を過ごすことでしょう。それこそが重要なことです。広島の子供たちだけでなく、地球上のすべての子供たちも同じように。それこそが我々が重視しなくてはいけない未来です」

演説内容はよく練り込まれた文章だった。このスピーチは間違いなく、過去7年以上、オバマの主要な演説を書き続けているスピーチライラーのベン・ローズが書いたものである。

大統領と2人で「謝罪の言葉は入れない」、それよりも「未来志向の内容にする」ということが話し合われて17分間の演説になったのだ。

ただ私にはオバマに注文がある。先月12日にブログで書いたとおり(オバマが本当にやるべきこと)、演説だけでなく、いまでも米露が所有する1万5000発以上の核兵器を削減するために、ロシアと協調しなくてはいけない。さらに真の意味での核兵器廃絶のために、核兵器所有国に働きかけないといけない。

それが残り8カ月の任期でオバマがやるべきことである。(敬称略)

obama5.28.16

誰よりも先に着席したオバマ大統領   By the White House

 

スナップショット!

obamainvietnam

By Anthony Bourdain’s Twitter

 

ベトナムのハノイを訪問中、料理人アンソニー・ボーディンとフォーとビールを堪能するオバマ。

ボーディンはアメリカでは知らない人がいない有名シェフ。『アンソニー世界を喰らう』などの番組がヒットし、どこにでも突撃していく料理人だ。

ここはボーディンのゴチ(約650円)だったという。

端麗な美

横浜の老舗ホテルで4月30日に行われた結婚式と披露宴ー。

2年ほど前にも結婚式の端麗さについて記した(人の記憶に残す)が、人の記憶に刻み込むという点で、結婚式ほど鮮烈に人のこころを打つものは少ないかもしれない。

しかも若いカップルが親族だけでなく、友人や知人たちと人生の昇華された瞬間を共有するのである。いくつものシーンが参列者のこころの襞に刻印されていく。私は数年たってもこの結婚式を鮮明に想起できるだろうと思う。

逆に言うと、日常のシーンというのは人のこころに残りにくい。結婚式前日のランチを思い出そうと思っても、すでに忘却の彼方に消えている。

結婚式を挙げないカップルも少なくないし、披露宴を挙行しなくても構わないが、人の記憶に残すという点で結婚式ほど意義深いものもないだろう。

お披露目をするということは、カップルとして新たに社会的責任を抱えることであり、人生の新しいチャプター(章)を開くことでもある。新しいチャプターに何を刻んでいくかは2人次第だが、今後の人生の気構えを公の場で示すという意味でも価値がある。

さらに今回思ったのは、結婚式に向き合う2人の真剣さが非日常的だということだ。結婚式は「カタチに過ぎない」という意見もあるが、大勢の前で人生への真剣さを示せる機会は多くない。こうした意味でも結婚式は挙げた方がいいと思う。

ただ、こうした感想を抱くのは私が年齢を積み重ねてきたからかもしれない。実は若いカップルを眺めたときに、純粋に微笑ましく、祝福したい気持ちを抱けるようになったのはそれほど遠い昔のことではないからだ。

人のこころには嫉妬や猜疑が宿る。特に同年代の未婚の男女であれば、友人や知人の結婚を素直に喜べない自分がいたりする。顔で笑いながら、こころには一抹の寂寥感や妬心が湧いたりする。

けれども今回出席した結婚式は、流麗であり端麗な美しさが光っていた。あらためて心から祝福したいと思う。

披露宴㈰

横浜のホテルニューグランドのチャペルにて

オバマが本当にやるべきこと

アメリカの国務長官ジョン・ケリーが11日、広島の平和記念公園を訪れた。広島でG7(先進7カ国)外相会議があったためで、他の外相と共に慰霊碑への献花を行ったが、広島で会議がなければ足を運んでいなかっただろう。

謝罪の言葉はなかった。戦後71年間、アメリカ政府が取り続けている原爆投下へのスタンスである。ケリーが個人的に謝罪したいと思っていたかはわからない。私人として「すみませんでした」との気持ちがあったとしても、公人としては政府の立場を守らざるをない。

オバマは5月に伊勢志摩で開かれるサミットのあと、広島に立ち寄って核兵器廃絶宣言をするとの情報もある。アメリカの大統領はいまだに広島にも長崎にも訪問していないのでニュースにはなるが、たとえ謝罪したとしても、私は「それで?」という思いでしかない。

実はオバマにはかなり期待していた。2009年1月に大統領に就任してから、本当に「Yes, we can」を形にできる大統領かもしれないと考えていた。しかも核兵器問題については、同年4月のプラハ演説で核兵器廃絶をはっきりと宣言し、それが評価されて同年ノーベル平和賞を受賞している。

けれどもその後の7年間、オバマが積極的に核兵器廃絶に動いたという印象はない。むしろ世界は北朝鮮をはじめとして、核拡散への方向に進みつつある。

オバマはアメリカの大統領である。言葉だけで終わらせずに、目に見えるかたちで核兵器廃絶を前に進めることができたはずだ。少なくとも、多方面で尽力しなくてはいけない。

政治はときに「言葉の格闘技」と言われるが、究極的には何がでたのか、何を成就させたのかが問われないといけない。そういう意味で、政治家は格闘技の試合の最後に「確かな勝利」をものにできないといけない。

5月に広島に数時間だけたち寄り、プラハ演説に似た雄弁な演説をするだけであれば、私は来なくてもいいと思う。謝罪よりも「確かな勝利」を世界中に示さなくてはいけない。それがアメリカ大統領の役割である。

ノーベル平和賞が泣いている。(敬称略)

Obama4.13.16

By the White House

ショーンKの深層心理

ショーンKことショーン・マクアードル川上が川上伸一郎であることはすでに万民の知るところであり、彼の経歴詐称は芸能ゴシップのヒトネタになってしまったので、ここでは敢えて真偽を追求しないことにする。

ただ、彼が抱える心の闇に少しだけ触れてみたいと思う。

邪推で終わるかもしれないが、私の興味は経歴詐称や整形疑惑、出生の秘密といったところより、なぜ川上が単なるホラッチョで終わらず、日本中を騙すほどの大うそつきになっていったかの過程にある。

「子どもは正直だ」という言葉がある。それは多くの子どもが周囲の状況を考慮せず、思ったことを口する時に使われる表現で、ウソをつかないという意味ではない。むしろ小学生は大人以上に多くのウソをついたりする。

大人になってからも、口からでまかせを言う人も多いし、自分を大きく見せたい欲求によるウソ、虚栄心や見栄からくるウソ、騙すための意図的なウソ、失敗を穴埋めするためのウソなど動機は数え切れない。

自身を社会の中に投影したとき、理想とする実像を手に入れられなかった10代後半から20代にかけて、川上はウソの経歴を自身の表皮にかぶせることで、少しだけ自身のコンプレックスを表面的に修正していく。

ハーバード大学MBA卒という学歴は、川上にとって最高級の表皮だった。本物ではなく合皮だけれども、磨き込むことで本物に見せかける作業を惜しまなかった。

父親がアメリカ人と日本人のハーフというくだりも実はウソのようだ。中学時代の同級生の「(当時は)日本人にしか見えなかった」との言葉からも、生い立ちさえもウソにまみれているように思える。

白人への劣等意識というより、日本社会のなかで圧倒的なまでの優越意識を獲得し続けたかったにみえる。そこからは、かなり強いナルシシズムを感じないわけにはいかない。

川上と実母の関係はほとんど報じられていないが、ナルシストは母親との特異な関係から生まれることがある。ふんだんな愛情を注がれもするが、家庭内に問題がある場合も多く、貧困や家庭内暴力がみられることもある。

親がナルシストであることもあり、川上は親から能力以上の期待をかけられていたことによるアイデンティティーの危機に直面していた可能性がある。ナルシストは自尊心を損ないやすいため、成人になってからは他者からの関心が常に必要になる。

注目されることで自己愛が保たれるのだ。

私は整形を否定しないし、整形手術をすることで本人が自信を獲得し、納得のいくものであれば結構だと思う。しかしハーフ顔を造りだすことはできても、生物学的にハーフになることはできず、絶えず現実とのギャップにさいなまされる。

英語力を鍛え、経営の知識を身につけてコメンテーターやラジオのパーソナリティーとして評価されつづける努力をすることで、ナルシストの面目が保たれる。

合皮であることがばれてしまったいま、彼に必要なのは自虐かもしれない、と思う。

再起があるとすれば、過去の自分を誰よりも過激に、辛辣に落としこめる術を獲得し、披露することである。自ら地に落ちたことを笑う自虐の術しか再起の道はないように思えるが、いかがだろうか。(敬称略)