絶妙なコンビーフサンド

東京都文京区腰塚に、知る人ぞ知る「千駄木腰塚」というコンビーフの専門店がある。これまで一度も食べたことがなかったが、先日口に入れる機会があり、一口食べて驚嘆した。

誇張ではなく、本当に人生で初めてといえる絶妙な味で、口の中で溶けた。「これまで食べてきたコンビーフはいったい何だったのか」と言わずにはいられない美味しさだった。

さらに電子レンジで温めると旨味は増し、リピーターになることは確実である。66年生きてきて、まだ「初めて」と呼べることに出会えるのは大変嬉しいことである。

紅葉前線

仕事場の横の道、丸の内仲通りにはイチョウの木が並んでいる。「紅葉前線」が北上し、いまがまさに見ごろ。歩道には数えきれないほどの黄色い葉が落ちており、1枚を自分のデスクに持ってきた。

魂魄の棟方志功

東京国立近代美術館で開催中の棟方志功展に足を運んだ。今年は棟方の生誕120周年ということで、数多くの作品が展示されていた。棟方は版画家とされているが、自身では板画と書いて「はんが」と読ませており、そのほかにも倭画(やまとが)、油画(あぶらが)などの作品も多く、「これぞムナカタ」と言える作品がズラリと並んでいた。

誰も真似のできない独自性は傑出しており、ずっと見ていられる作品ばかりである。まさに「不世出の天才」であるとの認識を深めて帰路についた。

「ほとんどの作品は撮影可能です」との説明を受けて、数多くシャッターをきった。

北野武登場

11月15日午後3時。東京丸の内にある日本外国特派員協会の記者会見に現れた北野武氏。「本音を語り尽くした」といえるほど、普段彼が考えていることを思う存分に語った会見になった。

普段のテレビ映像からも、あまり隠し事をせずに思いついたことを述べる人との印象はあったが、「生タケシ」はそれ以上で、なぜ漫才の世界から映画の世界に入っていったのか、さらには新しい映画「首」の見どころなど、縦横無尽に語っていった。

「漫才は若くないとできない。アスリートというか、もう40歳くらいで追いつかないと思った。それで映画に手をだした」と素直に漫才から離れた理由を述べた。そしてこうも言った。

「いろんなことをやったが、何をやってもダメ。本当にいろいろなことに手をだした。自分にピッタリなことを探してきたが、自分がやってきたことにはそれほど満足していない」

これほど才能のある人は滅多にいないし、何でも器用にこなせるという印象だが、自分への評価は厳しく、『何をやってもダメ』と断言。これは謙遜も少し含まれるが、会場で聴いていた限りではこの言葉は本心で、本当にダメであるとの思いを持っているようだ。それだからこそ、「まだまだ俺はできるしやらなくてはいけない」との考えがあり、これからも活動しつづけようとのエネルギーが沸いてくるかにみえた。

新作映画「首」では本能寺の変が描かれているが、「NHKの大河ドラマではカッコイイ役者をつかって綺麗事を描くが、 織田信長は男色で、 そうした点は描かない。ドロドロとした人間模様も大事なところ」とサラッと語った。

北野氏は同作品で原作、脚本、監督、役者をこなしているが、本当は出演する予定はなかったと認めた。だが、彼が映画に登場しないと海外で宣伝しづらいという声があったのででることにしたという。こうしたことを会見の場で素直に認めるところに北野氏の魅力があると思った。