藝祭2022

9月3日午後1時から上野駅エキュートで、東京藝術大学邦楽科で尺八を専攻している学生さんによる生演奏を聴いてきた。藝大の学園祭「藝祭2022」のイベントの一つだ。

今の時代にあっても、20歳前後の男女が雅楽、しかも尺八に没頭している姿は清々しさだけでなく、「これで生きていくんだ」というとてつもない凄みを感じ、心を打たれた。

ある女性の努力

今日、カフェに入ってコーヒーを飲み始めると、左横に座っていた女性が黙々とペンを走らせていることに気づいた。手紙でも書いているのかと思っていたが、しばらくしてからチラッと見ると、ノートに英単語を書きなぐっている。

学生さんという年齢ではない。すでに白髪が目立つ私と同年代と思える女性である。ノートの前には手垢のついた辞書が置いてあり、そこに付箋が何十枚と貼られている。

間違いなく英語の勉強である。英会話が達者であるのかはわからない。少なくとも、尋常とは思えないほどのレベルで英単語を勉強していることは間違いない。いろいろ理由はあるだろう。仕事で英単語を覚える必要があるのかもしれないし、趣味で英語を極めようとしているのかもしれない。会話も問題なくできる方かもしれない。

「どうして英単語を覚えてらっしゃるのですか」という質問が喉元まできたが、話しかけなかった。多分、アメリカのカフェで日本語を勉強している人がいたら、私は声をかけていたと思う。だが、日本ではなかなか見ず知らずの人に声をかけることはしないし、私も躊躇した。

カフェを後にし、話しかければよかったと思った。もしかしたらいい会話になり、興味深い話が聴けていたかもしれない。いまは少しばかり後悔している。