ドタバタはこれで収まる?

ホワイトハウスの人事の動きが凄まじい。

7月21日に広報部長になったばかりのアンソニー・スカラムチが米時間31日に解任された。メディアでは辞任となっているが、過去2週間で政権を去った人たちはすべてクビにされたと見るべきだろう。

・ショーン・スパイサー広報部長  ➡︎ 解任(7月21日)

・ラインス・プリーバス主席補佐官 ➡︎ 解任(7月27日)

・アンソニー・スカラムチ広報部長 ➡︎ 解任(7月31日)

報道官が交代することは過去の政権でもよくあったが、これほど短期間で代わることはなかった。

「やらせてみたらダメだった」というのはどの組織でもあることで、「辛抱して続けさせる」方法と「おまえはクビ」の方法がある。トランプ政権では間違いなく後者が選択されている。

ただ31日に主席補佐官に就任した元海兵隊大将のジョン・ケリーが、軍隊で培った統制力をホワイトハウスに持ち込んで、トップダウンの流れを作るようにも思える。

真っ先に手をつけたのが、スカラムチをクビにすることだった。

スカラムチの弁明は「ケリー氏がきたことで、(人事を)白紙に戻すことが最良だと思った」である。(敬称略)

コミー前長官の爆弾発言

5月9日、トランプはFBI長官ジェームズ・コミーを突然解任した。そのコミーが8日、連邦議会上院の情報特別委員会の公聴会に現れて、「なぜ私が解任されたかわからない」と1カ月たった今でも、本当の理由はトランプから聞かされていないと述べた。

CNNの生中継でコミーの表情や話ぶりを見る限り、誠実に受け答えしているように見えた。真実を語る姿勢がうかがえる。

9日午後のテレビ番組で、コミー証言について話をすることになっていたので、メモを取りながら観た。

はっきりしたのは、コミーはトランプに「全面戦争」と言っていいだけの戦いを挑んだことである。

戦いを挑んだ以上、大統領をかばうような嘘をつく必要はない。真実をつきつけることが、FBI長官だったコミーの使命でもあった。

解任前、コミーは元大統領補佐官マイケルフリンと駐米ロシア大使との関係を捜査していた。トランプは自分の部下が捜査されるのを嫌い、コミーを解任。それが司法妨害にあたるかが注目点の1つになっている。

ただ公聴会では、それ以上に注目すべき爆弾発言があった。ロシア政府が昨年の大統領選挙に大々的に介入していたというのだ。

これまでは「疑惑」のレベルでとどまっていた。しかしコミーは言い切った。サイバー攻撃は「少なくとも数百回におよんでいた」と断言したのだ。

「ロシア政府が2016年の大統領選に介入したという点は疑いようがありません。目的をもって介入していました。洗練された方法を使っていたのです」

これは5月23日にCIA前長官のジョン・ブレナンがやはり議会公聴会で「ロシア政府による選挙介入があった」という証言内容と合致する。

諜報機関のトップだった2人による発言である。しかもメディアが報道した内容ではなく、嘘を言えば偽証罪に問われる公聴会の証言だ。

これからFBIとCIAという米諜報機関とトランプによる全面戦争がはじまることになる。また忙しくなりそうである。(敬称略)

マクロン勝利の意味

フランスのエマニュエル・マクロン氏(以下マクロン)が次期大統領に当選した。

39歳という若さや極右のマリーヌ・ルペン氏を破った点に関心が集まるが、私は既成政党ではなく、中道系候補として当選を果たしたところに意義があると考えている。

これまでの古い政治体制を打ち破るという点で、39歳という年齢はそれだけで魅力があったし、トランプ政権の反動という意味から反ルペンの流れができたとの見方は間違ってはいない。

ただ保守対革新という古い図式から1歩ではなく2歩ほど先に進んで、政治に新しいモデルを取り込んだ。労働環境をより柔軟にする主張や公務員の終身雇用の廃止といった内容にマクロンの考えが表れている。

右派と左派の仲裁をするということも口にしてもいる。どちらにも寄り添わない点がマクロンらしさであり、今後も新しいことに挑戦し続けていってほしいと思う。

すでに急進的な左派と右派から嫌われているが、自分流を貫き続けながら、広い支持が得られることを願っている。

密かに進行していること

北朝鮮情勢が緊迫している。アメリカ政府はすべての情報を出してこないし、公表される情報もかなり制限されている。

当ブログにおいて以前、時事問題などで主要メディアに「語られない内容も重要」と書いた。

メディアに公表される内容とは別に、報道されていない情報が背後にあり、そこにこそ真理がある場合がある。公表してしまうと問題になる案件は多く、特に戦時下では敵国に知られてはいけない情報は出すべきではない。

先日、ある米政府高官と六本木のカフェで朝食を共にしながら、1時間ほど話をした。

私が聞きたいと思っていた北朝鮮について、高官は多くを語らなかった。こちらが核心に迫る質問をすると「わからない」と淡々と言った。ウソはついていないように見えた。言えない部分があるのだ。

当たり前である。私に話をするということは報道されるということであり、北朝鮮に情報がもれるということである。

特殊部隊による金正恩暗殺というオプション、北朝鮮に報復させない圧倒的な先制攻撃というオプション、金正恩が白旗をあげるまで徹底的に追い込むオプションなど、さまざまな選択肢がある。

高官が仮にそうした情報を手にしていたとしても、私に話をすることなどないだろう。

朝食の始めに、「今日の会話はオフレコだから」と言って彼に安心感を与えたが、重要な話をメディアの人間にするほど不用意ではない。

トランプは北朝鮮との緊張関係が今後どうなるのか、いや、どうしたいのかの究極の回答を持っていないように思えるし、触れないだけのようでもある。

CIA長官のマイク・ポンペオが先月末、韓国に飛んでいた。そこには確実に表にはでてきていない軍事活動・情報があり、ビン・ラディン暗殺時のように、突然「金正恩が暗殺されました」というニュースが飛び込んでくるかもしれない。

私は何が起きても驚かない心づもりでいる。

北朝鮮情勢とキューバ危機

今朝、北朝鮮がミサイル発射に失敗したが、アメリカは北朝鮮との軍事的対立にいつでも対応できる態勢に入っている。

トランプは13日のツイートで、「中国が北朝鮮を適切に対処できなければ、アメリカは同盟国と共にヤルだけだ」と軍事攻撃も辞さない構えをみせた。

金正恩がアメリカの威嚇に一歩も引かず、今後、6回目の核実験を行ったり、ICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射した場合には、トランプは本気でしかける可能性がある。

ただ北朝鮮の韓国・日本への報復を考えると、アメリカは足踏みせざるを得ない。過去20年以上、アメリカが北朝鮮に先制攻撃をしかけられなかった理由もそこにある。

こうした状況で思い出すのは1962年のキューバ危機である。ジョン・F・ケネディーは核兵器がキューバに持ち込まれることを恐れて海上封鎖をした。

この時の海上封鎖というのは、旧ソ連の核兵器をキューバに上陸させないということだ。それにより、米ソの戦争は回避されたと言われている。

ただケネディーはキューバへの空爆を真剣に考慮していたし、カストロも攻撃された時にはアメリカへの報復を念頭に置いていた。だがケネディーは熟慮の末に軍事攻撃に踏み切らなかった。

実は当時、フルシチョフはアメリカと戦争をすることなど真剣に考えていなかったことが後年、伝えられた。アメリカを恐れてさえいたという。

いまの金正恩がまさにフルシチョフで、外見は強がっているように見えても内心は恐れおののいているのかもしれない。

外国のメディアをピョンヤンに招いている間は軍事攻撃はないし、自分の命も安泰のはずである。

負けず嫌いであるが、誰よりも命が惜しいタイプなのかもしれない。いや、今はそう願う。(敬称略)