今年最後の大物

トランプ政権の前主席戦略官スティーブ・バノンにインタビューした。朝日放送「正義のミカタ」(23日放送)の仕事で、短い時間だったが、バノンの考え方を垣間見た。

ロシア疑惑は完全な「フェイクニュース」と言い切ったが、その時だけ口調が速くなり、より熱くなっていた。ロシア政府が昨年の大統領選に関与したことは間違いないはずだが、それすらも否定してみせた。

北朝鮮については中国がコントロールすべきとの立場だが、日本も十分に有事に備えておくべきと言っていた。

トランプとはいまでも電話で頻繁にやりとりしており、影響力の強さは相変わらずだ。イスラエルの大使館をテルアビブからエルサレムに移転するトランプの判断も、バノンがトランプの背中を押したとの思いを強くした。バノンは親イスラエルで移転推進派だからだ。

人間的にはたいへん深みのある人なので、アルコールを入れながら1時間ほど語りたかったとの思いが強い。

個人的には今年最後の大物だった。(敬称略)

バノン12月17日

(ベルサール渋谷にて。自分の顔がデカイことに驚く・・)

マイケル・フリンは起訴されるのか

アジア歴訪中のトランプ。メディアの関心は日本、韓国、中国の首脳がトランプと何を話したかだが、ワシントンではロシアゲートが動いている。

当欄で何度も書いているが、最終的には特別検察官のロバート・ムラーがトランプの「首を絞めにかかる」ところまで行く可能性がある。つまり、トランプ起訴である。

9日、トランプと習近平との会談があり、ロシアゲートを報じる余力は日本の主要メディアにはなさそうだが、国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリンと息子が起訴される可能性がでてきている。ムラーが起訴できるだけの情報をつかんだとの米報道がある。

フリンは今年2月13日、副大統領ペンスに虚偽の報告をしたことで辞任。ロシア側と密談があった事実をペンスに言わなかった。だが、フリンの言動の核心はこれだけではない。もっと深い闇を知っている可能性が十分にある。

しかも息子もかかわっていた。ムラーは息子を盾に司法取引をして、フリンに知っていることのすべてを供述させるかもしれない。またフリンを無罪放免にする代わりに、ロシアゲートの真相を吐かせることも考えられる(トランプ、追い込まれるか)。

トランプが当選してから1年。今後はムラーにどんどん追い込まれていくはずである。(敬称略)

トランプ、追い込まれるか

目の病気でゼイゼイいっている間に、大変なことが起きていた。

国内問題の筆頭は、なんといってもバラバラ殺人事件である。全容解明には少し時間がかかりそうだが、犯人は逮捕され、供述を始めているので、今後は全メディアがあらゆる角度から報道していくだろう。

アメリカではロシアゲート事件が、動いた。7月に当欄で書いたとおりのことが起こる可能性がある(今度はどうなる?)。トランプはアジア歴訪などしている場合ではないはずだ。

ある人はワシントンを離れられるのでいいと言う。逆である。ホワイトハウスからの同行記者が、5カ国歴訪中ずっとついて回るので、トランプへの質問の8割はロシアゲートになるはずだ。

10月27日、トランプの選挙対策本部長だったポール・マナフォートと副本部長リチャード・ゲーツが起訴され、ますますウォーターゲート事件に似てきている。

起訴状を入手して読んだ。特別検察官のロバート・ムラーが厳格に、トランプ政権からの圧力に屈せずに捜査を進めてきた結果が書かれていた。敬服するしかない。

さらに外交顧問だったジョージ・パパドポロスという男も7月に逮捕していた。パパドポロスはまだ30歳で、外交顧問と呼ぶには経験が足りない。そのぶんムラーのチームの司法取引に応じて、トランプ周辺の人物の違法行為をしゃべっているようだ。

上記の3人には間違いなく実刑がくだる。

あとは国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリン、石油・エネルギー・コンサルタントのカーター・ペイジ、ジャレッド・クシュナー、トランプ・ジュニアが起訴されるかどうかだ。

そして最後にトランプ本人がすべてのことを知っていたかどうかが問われる。

もちろん、そこまで進まないこともあるが、ロシア政府による選挙介入が「親分」の耳に入っていないわけがないというのが私の見立てだ。(敬称略)

自動的に大規模報復?

お盆でもいつもと変わらずに仕事場に向かう。電車に乗りながらネットラジオでフォックス・ニュースを聴くと、ちょうど北朝鮮問題について議論が交わされていた。

共和党保守派のコメンテーターが嬉々とした声で言った。

「北朝鮮がミサイルをグアムに向けて撃った時点で、アメリカは大規模な報復をしかける。これはもう自動的に行うべき」

久しぶりに戦争ができると思うと嬉しくてしょうがない・・・そんな思いが言葉の裏側にあるようだった。

現時点でも、私は北朝鮮が撃ってくる可能性はかなり低いと考えるが、万が一の事態もある。それほど金正恩は信じられない男である。

ただその時は北朝鮮の攻撃よりもアメリカ側の報復による死傷者や影響の方が甚大になるはずだ。

戦争に付随する悪影響は米軍の報復で想像を絶するレベルにまで達する恐れがある。金正恩が大胆な行動を起こさないことを願うばかりだ。

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2011年4月、北朝鮮を訪れた時の1枚。朝鮮人民軍の少将が韓国との国境付近を案内してくれた。

顔は笑っている

いまにもアメリカと北朝鮮が戦争を始めるかに見える。

しかし、そう見えるだけで、当事者であるトランプと金正恩は意外に冷静であるかもしれない。それは1時間ほど前にトランプが自身のフェイスブックにアップした動画を観ると推察できる。

「日本はわれわれがやっていることに満足(happy)していると思う」と述べ、唖然とさせられるが、実は中国を強力にプッシュして事態の打開をさぐっている。

軍事オプションは用意しているが、できれば平和裡に解決したいというのが本音だ。国務長官のティラーソンや国家安全保障担当補佐官のマクマスターが大きなブレーキ役になっているはずだ。

とにかく金正恩をできるだけ追い込んで、アメリカとの交戦を諦めさせるという作戦だ。本気で北朝鮮を攻撃する気はないように思える。トランプの顔は笑っている。

それでも数%は可能性がある。日本はそれに備えるべきであ(FBにアップされたニュージャージーでの会見)(敬称略)。