ロシア疑惑(5)

3月13日のブログ「ロシア疑惑(4)」で、ロシア疑惑を調査していた連邦下院情報特別委員会が「シロ」判定をだしたと書いた。

同時に、特別検察官ムラーはこれから数カ月をかけて、ロシア政府とトランプ陣営との関係を捜査していくとも述べた。そのムラーは15日、トランプの会社「トランプ・オーガニゼーション」に対してロシア関連の書類をすべて提出するように求めた。

この動きは、トランプ本人が2年前の大統領選でロシア政府と共謀していたかどうかを探るより、トランプ本人と会社が選挙前、ロシアとの取引で違法行為をしていなかったを捜査するためであると思われる。

ムラーが求めているのはあくまでも法に触れる行為である。たとえ選挙時の共謀がなかったとしても、それ以前の違法行為が認められればトランプは起訴される。選対部長だったマナフォートのようなことが起こる可能性はある。

マナフォートは昨年10月に複数の容疑で起訴され、2日前、すべての容疑で有罪になれば「量刑は最長で305年」と報道されたばかりである。これがアメリカの司法の恐ろしさである。(敬称略)

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ロシア疑惑(4)

「シロなんですか」

長期間にわたって捜査されていたロシア疑惑の答えはシロだった。ロシア政府とトランプ陣営の間に共謀はなかったというのだ。

ただこれは一つの捜査の答えに過ぎない。米連邦下院情報特別委員会が12日にだした結論だ。まだ上院情報特別委員会、さらに司法委員会もロシア疑惑を捜査しており、今後、個別に報告書を発表する。

それだけではない。最も当件に力を入れている特別検察官ロバート・ムラーのチームも最終報告書を司法省に提出する義務があるが、数カ月先になるとみられている。

今回のシロ判決は、共和党議員が多数を占める委員会によるもので、独立した検察チームとして捜査をすすめるムラーの報告書の方が、信憑性の高さは上と読む。

もしムラーが「トランプはシロ」という結論をだしたら、私は素直に従いたいと思う。(敬称略)

ロシア疑惑(3)

今月10日、興味深いインタビューが米NBCテレビで放映された。

今年1月まで保守系のフォックスニュースにいた女性ジャーナリスト、メーガン・ケリーがプーチンにインタビューしたのだ。NBCと言えば、フォックスとは対極のリベラル系放送局である。

ケリーはかなり突っ込んで、ロシア疑惑について問い糺していた。だがプーチンは、ロシア政府が2016年大統領選に介入しことを否定しつづけた。

「どうしてロシア政府が(米大統領選に)介入する必要があるんですか。誰にそんな許可を出すんですか」

とぼけているとしか思えない答えだった。ケリーはさらに、2月16日に13人のロシア人がロシア疑惑で米捜査官に逮捕されたことにも触れた。だがプーチンはこう切り返している。

「1億4600万のロシア人がいるんです。まったく関知しませんね。彼らはロシア政府の利害を代表しているわけではない」

プーチンらしいといえばそれまでだが、証拠となる文書がモスクワに送られてきたら「見てみる」と述べただけだった。

ロシア疑惑を捜査している特別検察官のロバート・ムラーは、証拠があったからこそ13人を起訴したのである。

本丸(トランプ)を落とせるのか落とせないのか、その答えがでるのはもう少し先になりそうだ。(敬称略)

kelly3.12.18

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似た者同士

8日午前、トランプが金正恩からの招待を受けたことで、米朝関係は急速に前へ進みそうだ。

しかし今年1月1日、金正恩は「新年の辞」で「アメリカ本土全域が我々の核攻撃の射程内にあり、核ボタンはいつも机の上にある」とアメリカを威嚇していた。

翌日にはトランプが、「より大きく強いボタンが自分の机の上にある」とツイートで反撃。2カ月半前まで、米朝関係は緊張状態にあった。

それが平昌オリンピックを契機に、まず南北が接近し、雪解けとも思えるような関係改善から、北朝鮮は急にアメリカに接近してきた。

表面的にはたいへんいいニュースだし、私も昨日、テレビの生放送でそう発言した。しかし、いつトランプと金正恩に心変わりが起きてもおかしくない。それほど二人は気まぐれであり、サイコパスといっていいほど反社会的な人格を形成してきたと思える。

似た者同士のリーダーである点で大変仲良くなる可能性があると同時に、すぐに心変わりして相手を嫌悪し、憎しみを抱くこともあるだろう。

しかも2012年4月、北朝鮮は最高人民会議で憲法改正をおこなって、序文で「核保有国」になったと明記した。その国が簡単に「非核化」を行うとは思えないし、信じられないのだ。

非核化をするということは、憲法違反のなにものでもない。金正恩はどう説明するつもりなのだろうか。たぶん本心には、非核化などないとみる。

米朝関係は楽観と悲観をかかえたまま、相互に出方をうかがいながら進んで行くことになるが、私は楽観視していない。(敬称略)

ロシア疑惑(2)

前回のブログ「ロシア疑惑(1)2月24日」では、ロシア疑惑の経緯とこれまで起訴された人物について簡単に記した。

元FBI長官ロバート・ムラーが特別検察官に任命されてからほぼ10カ月。まだ全容解明にはいたっていないし、検察側の切り札はまだ出していない。

昨年12月、私がトランプ政権の主席戦略官だったスティーブ・バノンにインタビューした時、彼はこういうことを口にしていた。

「コミー長官を解任したことは、アメリカの近代政治史上最大のミス」

誇張が込められていることを考慮しても、トランプとしては「やっちまった」感が強い判断だったわけだ。そばにいたバノンが一番そのことを知っている。

コミーはロシア疑惑の捜査に入っていた。トランプとしては、コミーを辞めさせれば捜査が進まないと思ったのだろうが、まったくの逆だったということである。

FBIを含む司法省の人間は反トランプで結束したからだ。人望のあったコミーを無理やり辞めさせたトランプの暴挙は許せないという論理である。

以来、「コミー解任は司法妨害にあたる」というのが、ムラーチームが狙うトランプ起訴の理由のひとつになっている。

昨日、ビル・マーというテレビ司会者がHBOの自身の番組で、オバマ政権時の司法長官エリック・ホールダーにインタビューしていた。私は90年代からマーの番組はよく観ていた。

ホルダーはムラーが司法妨害という線で捜査を進めているはずだと述べた。

「私は過去30年ほどムラーを知っています。彼はいま(司法妨害を立件するために)できる限りのことをしているはずです。もうしばらく待つべきでしょう」

しばらくしたら、「トランプ大統領が起訴されました!!」というニュースが飛び込んでくるかもしれない。

あり得る話なのである。(敬称略)