核兵器を共有しませんか!?

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(2011年4月、北朝鮮側から撮った板門店。右奥の白い建物が会談が行われた平和の家)

板門店で南北首脳会談がはじまった。

午前9時半、金正恩が和やかな表情で文在寅に近づき、握手を交わした。さらに2人は手をつないで国境を行き来し、会談場所へと歩を進めていく。

これだけを眺めると、南北首脳が過去のいざこざをすべて過去へ押しやり、両国が統一に向けて歩きだしたかに見える。

統一という最終目標を重視し、そこに至る途上のデコボコや障害をすべて乗り越えるだけのエネルギーと手腕があれば、最終地点に行きつくことは可能に思える。それほど両首脳が出会ったときの表情はよかった。

時に楽観は重要である。だが、それですべてがうまくいくわけではない。北朝鮮が核兵器をすべて放棄するとは考えにくい。一度手にした「魔のオモチャ」は手放せない。核兵器こそが最後のカードであり、国家の自信につながるからだ。

仮に「核兵器は捨てません。でも文さん、われわれと共有しませんか」といった提案が金正恩から発せられたらどうするのか。

今日の会談でどこまで核兵器について語られたのか。すべてを知りたいところである。(敬称略)

揺れ動く世界

早稲田大学オープンカレッジでの講義が始まった。受講生の方は本当に真剣なまなざしで、まるで私の眼を射るかのように見つめてくださり、気が引き締まる。

私は学者ではないので、ジャーナリストとして最新のニュースの分析、解説、そして展望を語るようにしている。先日は安倍・トランプの日米首脳会談とアメリカの銃規制の話をした。

首脳会談は戦いではないが、両首脳があいまみえて勝者と敗者が出るとしたら、今回は引き分けだったと思う。北朝鮮の非核化では見解が一致しているし、日本側の要望である拉致問題をトランプに飲ませることができた。

トランプはFTA(自由貿易協定)をもっと安倍に求めてくるかと思ったが、記者発表された内容を見る限り、投資・貿易の新しい枠組みを協議していくという流れに落ち着いた。これは言い換えればFTAの別バージョンで、日本は十分に警戒する必要がある。

21日朝になって朝鮮中央通信が、北朝鮮の核実験中止、ICBMの試射中止、さらに核実験施設も廃棄するというニュースを伝えた。東アジアだけでなく、世界的にも大きなニュースである。

ただ注意しなくてはいけないのは「いまもっている核兵器の破棄」を宣言していないことだ。CIAは北朝鮮が30~60個の核兵器を所有していると推測している。

金正恩は核兵器だけは手放さないだろうし、ウラン濃縮施設も破壊せずに存続させると考えられる。過去20数年、周辺国をだましつづけてきた国である。これからも核兵器を隠し持つと考える方が理にかなっている。(敬称略)

North Korea1 024

トランプのシリア攻撃は成功でも失敗でもない

ほぼ1年前、シリア政府は今回と同じように自国民に化学兵器を使って多数の死傷者をだした。それに対してトランプはオバマ政権の中東政策と決別する形で、巡航ミサイル(59発)を打ち込む命令をくだす。

2日前のシリア攻撃(105発)と状況が酷似する。英仏を巻き込んだところとミサイル数が違うだけで、シリア問題を解決できるわけではない。米国内の意見も賛否両論で割れている。

昨年も当欄で感想を記しており、同じオピニオンが使えるので昨年のものを転載する(2017年4月7日)。

 

「これまでずっとシリアには軍事介入しないと言ってきたトランプは、政策という点ではオバマと同じだった。しかしアサド政権が4日、化学兵器を使用したことで軍事攻撃にでた。オバマだったら静観しているところである。

印象としては、過半数の米市民がシリア攻撃に賛同しているので、36%まで落ちた支持率は回復するだろうし、フロリダで会談している習近平にも、「やる時はやる」という大統領としての威厳を示すことになった。

短期的にはプラス要因であり、北朝鮮への軍事行動もあると匂わせることで、習近平に北朝鮮にさらなる圧力を加えさせることになるはずだ。だが、長期的にはロシアとの敵対的な関係が長引き、泥沼化するシリア内戦によって政権の重荷になる点でマイナスであろう。(敬称略)」

ロシア疑惑(7)

シリーズでお伝えしている「ロシア疑惑」。トランプがいつ特別捜査官ロバート・ムラーに起訴されるのか注視してきたが、4月4日、複数のアメリカメディアは「ムラーはトランプを犯罪対象にしていない」と伝えた。

昨年、起訴された4人の関係者のうち3人が司法取引に応じ、検察側に提供された情報から起訴にあたらないと判断したのだ。しかし報道では「現在のところ」という条件がついている。

何度もお伝えしているが、ロシア疑惑の核心は「ロシア政府が2016年の大統領選で、トランプ陣営と共謀していたかどうか」という点に尽きる。検察側としては、そこに何らかの違法行為があったかどうかを探ってきた。

仮説としては、ロシア政府がトランプを勝たせるために複数の工作を施したというものだ。

トランプが犯罪対象でないと発表された翌5日、今度はロシアの億万長者3人がムラーのチームから事情聴取を受けているとの報道があった。1人はスレイマン・ケリモフという億万長者で、いわゆる新興財閥(オリガルヒ)だ。

ケリモフは10年以上前から西側諸国の株式を取得しはじめ、ロシアでは炭酸カリウム最大手シルビニットの最大株主。金属業界で財を築いた人物で、2000万ユーロ(約26億円)をロシアからフランスに運び、アメリカに持ち込んで16年大統領選に使途したのではないかとの疑いがもたれている。

外国人や外国企業からの献金は違法なため、実証されれば大きなニュースだ。CNNによると、金融機関を使っての送金であると証拠が残るために現ナマを移送させたという。

日本のメディアでは大きく報道されないが、ロシア疑惑の捜査は今でも少しずつ動いている。(敬称略)

ロシア疑惑(6)

特別検察官ムラーのチームの捜査は確実に進んでいる。日本のメディアでは日々の進展をほとんど報道していないが、少しずつ動いている。

昨年、トランプ周辺の4人が起訴されたことはすでに記した。その中で、マイケル・フリンジョージ・パパドポロスが罪を認めてムラーチームとの司法取引に応じた。

数日前、トランプ選挙対策本部の副部長だったリチャード・ゲーツも司法取引に応じている。昨年10月に逮捕されて以来、頑なに罪をみとめてこなかった男である。

司法取引でゲーツの知る情報を提供すれば、最低5年といわれた量刑を執行猶予にする取引に応じたのだ。あとはポール・マナフォートだけである。

今週火曜、マナフォートとゲーツがロシア政府の諜報員と接触があったとの報道が流れた。彼らがロシア政府と組んで違法な選挙介入をしたかどうかはわからないが、時間がたつにしたがって次々にボロがでてきている。(敬称略)