金正恩からの親書

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トランプがツイッターで金正恩からの親書を公開した。

金正恩は最初から最後までトランプのことを「大統領閣下(Your Excellency Mr. President)」と呼び、まるで手もみをして土下座をしているかのようだ。シンガポールで会った時もトランプのことをそう呼んでいた可能性がある。

内容はトランプへの感謝と米朝関係が今後もよくなることを期待し、次回の会談も楽しみにしているという前向きなものだ。これは金正恩の本心であるかにも思える。

核兵器を放棄することはないが、トランプとの個人的な関係は温めていきたいという都合のいい考えで、トランプに「親書をどうか文字通り受け取ってください」との願いが込められている。

トランプは2国間関係の「Great progress(大きな進展)」と手放しの喜びようだが、2人の間に別の取り決めがあるように思えてならない。(敬称略)

ロシア疑惑(9)

日本時間17日午前、米メディアはロシア疑惑で一つの結論がでたと報じた。

2016年大統領選で、トランプ陣営とロシア政府との間に共謀があったかどうかを捜査していた特別検察官ロバート・ムラーが、「トランプを起訴しない」ことをホワイトハウスの弁護士チームに知らせたのだ。

ムラーの究極の目的はもちろん不正を暴くことだが、最終目標としてトランプの起訴があった。だが司法省のガイドラインに従い、現職大統領を起訴することは適切でないと判断したという。

「エッ、いまさらですか」というのが私の率直な反応である。

90年代後半、現職大統領のビル・クリントンが起訴された過去があるからだ。クリントンはポーラ・ジョーンズという女性からセクハラ訴訟を起こされた。

裁判所は一審で、現職大統領であるため起訴は不適切と判断したが、ジョーンズは控訴。巡回裁判所は訴訟を受理してセクハラ訴訟は前進した。最後は示談が成立してクリントンはジョーンズに85万ドル(約9300万円)を支払って幕となる。

けっして現職大統領を起訴できないわけではないのだ。ムラーが起訴を見送った背景には、トランプがロシア政府と共謀していないことがわかったからに他ならない。

ムラーが特別検察官に任命されてちょうど1年。これまで140万ページにおよぶ資料を集め、28人に事情聴取を行ったが「トランプが首謀者」という仮説は崩れたことになる。

昨年トランプの周辺から4人が逮捕されたが、それ以上は前へ進まなかった。捜査はこれからも継続されて、最後報告書がだされる予定だ。トランプの起訴がなくなったことでロシア疑惑はほぼ終わりを迎えつつある。(敬称略)

奇策としてのノーベル平和賞

ノーベル平和賞をトランプと金正恩に授与するー。私が提案する奇策である。

ここで述べるまでもなく、すでにトランプと金正恩にノーベル賞をという話は出ているが、私が意図するのは将来を見据えた予防効果としての授与である。

どういうことかというと、1カ月もしないうちに米朝首脳会談が実現すれば、両国だけでなく周辺国が北朝鮮の非核化に向けて動きだすはずである。

前向きに捉えれば、東アジアの安全保障上、願ってもないことである。金正恩がいま手にしている核兵器をすべて廃棄する可能性はほとんどないと考えるが、使用させない・売却させないという点に限定すれば可能性がないことはない。

そこで米朝首脳会議が成功裏に終わり、平和協定が結ばれ、両国間に国交が樹立した時にノーベル平和賞をトランプと金正恩に授与するのである。

両首脳にノーベル平和賞受賞者ということを日々意識させることで、戦争という行為にクサビを打ち込むことができる。過激な軍事行動は自ずと自重するようになる。

トランプや金正恩のような人物は、特にノーベル賞の重さを意識するのではないか。妙案ではないだろうか。(敬称略)

ロシア疑惑(8)

北朝鮮問題に国際ニュースのスポットライトが当たっているので、トランプのロシア疑惑が忘れられている。だが特別検察官ロバート・ムラーの捜査はまだ終わっていない。

前回の「ロシア疑惑(7)4月10日」で、トランプは犯罪対象になっていないことを記した。しかし、ムラーはいまだにトランプに直接会って事情聴取する意向をもっている。

ということは、いまだにムラーは2016年選挙で、トランプ陣営がロシア政府と共謀していた可能性があると疑っているのだ。実際にムラーのチームは40ほどの質問をトランプにぶつけるつもりでいる。

トランプ本人はロシアと接触がなくとも、選対本部の人間が共謀していた可能性は捨てきれない。トランプがそれを知っているかどうかが焦点になる。

あとはトランプが前司法長官ジェームズ・コミーを解任したのは司法妨害にあたるかどうかも探る必要がある。

先週、トランプの弁護士チームに元ニューヨーク市長だったルドルフ・ジュリアーニが加わった。まだまだ一波乱も二波乱もありそうなロシア疑惑捜査である。(敬称略)

核兵器を共有しませんか!?

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(2011年4月、北朝鮮側から撮った板門店。右奥の白い建物が会談が行われた平和の家)

板門店で南北首脳会談がはじまった。

午前9時半、金正恩が和やかな表情で文在寅に近づき、握手を交わした。さらに2人は手をつないで国境を行き来し、会談場所へと歩を進めていく。

これだけを眺めると、南北首脳が過去のいざこざをすべて過去へ押しやり、両国が統一に向けて歩きだしたかに見える。

統一という最終目標を重視し、そこに至る途上のデコボコや障害をすべて乗り越えるだけのエネルギーと手腕があれば、最終地点に行きつくことは可能に思える。それほど両首脳が出会ったときの表情はよかった。

時に楽観は重要である。だが、それですべてがうまくいくわけではない。北朝鮮が核兵器をすべて放棄するとは考えにくい。一度手にした「魔のオモチャ」は手放せない。核兵器こそが最後のカードであり、国家の自信につながるからだ。

仮に「核兵器は捨てません。でも文さん、われわれと共有しませんか」といった提案が金正恩から発せられたらどうするのか。

今日の会談でどこまで核兵器について語られたのか。すべてを知りたいところである。(敬称略)