ドナルド・トランプ氏(以下トランプ)が大統領に就任してからもうすぐ1カ月が経とうとしている。大統領として米国の頂点に君臨するのは2回目になるが、私は最初の政権の4年間から多くを学び、もう少し穏やかな行政をつかさどるようになるかと思っていたが、期待外れだった。
その言動はまるで「大統領という地位にいれば出来ないことはなにもない」とでも言わんばかりで、自分には全知全能の神がついていると錯覚しているようですらある。たとえば、1月20日の就任から2月12日までに計65本の大統領令に署名している。大統領令は議会の承認なしで決定できる大統領の特権で、過去40年ではもっとも多い。それは文字通り、「大統領の一存で動かせる力」と述べて差し支えないのだ。
モントリオール大学のロドリク・トレンブレー名誉教授はネット上で、「ドナルド・トランプは急進的な政権を築き、自分一人で世界中の知識を手中に収めているかのごとくで、大統領としては欠陥だらけである。ほとんど独裁的と言える大統領令が次から次へとだされたことは未だかつてなかったことで、米議会がこれまで決めてきた法律や、チェック・アンド・バランスの政治システムに違反するものだ」と厳しい言説を展開している。
2016年11月の大統領選で、トランプが大統領になることが決まった直後、3人の精神科の大学教授が連名で次のような言説を展開している。
「誇大性、衝動性、軽蔑や批判に対する過敏性、また空想と現実の区別がつかないといった精神的不安定さがみてとれる。大統領としての巨大な責任を担うことができるのか、その適性が疑問視される」
こうした精神科の専門家がトランプに警鐘を鳴らしているのである。最初の4年間はなんとかやり過ごすことができたが、今後の4年間は甚だ疑問である。