トランプが強い理由

米大統領選の候補者選び(共和党)で、予備選最初のアイオワ州でトランプ前大統領が圧勝した。先週まではライバル候補のニッキー・ヘイリー氏やロン・デサンティス氏に追い上げられ、トランプ氏は苦戦を強いられるとの見方もあった。

だが蓋をあけると、トランプ氏の得票率は51%で、2位のデサンティス氏の21%をダブルスコア以上で負かした。しかも驚かされるのは、アイオワ州にある99の郡の中で1郡を除いてすべてでトランプ氏がトップにきたという点である。

あらためてトランプ氏の強さがどこにあるのかを分析してみたい。最初は昨年8月31日の当ブログで指摘したとおり(トランプの支持率がいまだに高い理由)、アメリカでは近年、世間の関心が女性やマイノリティーにいきがちで白人男性が社会的に軽視される傾向があることから、白人男性からの逆襲的な意味合いで、トランプ氏に支持が集まっている側面がある。トランプ氏の支持者の多くが白人の中高年男性で、「いま米国で最も軽視されているのが我々」といった被害者意識がトランプ支持に集約されたといえる。

別の理由は、バイデン氏をはじめとする多くのアメリカ人は多様な文化を尊重する「多元主義」を信奉しているが、南部を中心にした白人層にとっては、それほど多様ではない小さな都市にこそ「本当のアメリカ」があると捉えている。トランプ氏はその考え方を携えているため、古き良きアメリカを再び具現化してくれるとの願いからトランプ氏に支持が集まっている。

さらに保守派の白人たちにとって、トランプ氏はある意味でヒーローであるとの見方がある。背が高く、碧眼で、経済的に成功し、多くの困難を乗り越えてきた人物であることからカウボーイに見立てており、単純明快な論理でものごとを推し進めていける成功者であるとみている。トランプ氏が大統領になれば、再び古きよきアメリカが戻ってくるとの願望が根底にある。

まだ予備選も1州が終わっただけに過ぎないが、11月5日の本選挙では「バイデン対トランプ」の戦いの可能性がさらに強まってきた。