ある昼下がり

JR有楽町駅前にある三省堂に立ち寄った。特定の書籍を買おうと思っていたわけではない。ぶらりと立ち寄っただけである。あの店舗は1階に雑誌や新刊本が置かれ、2階には文庫が並んでいる。

「そうだ。あの文庫はあるだろうか」

あの文庫というのは、私が5年前に文春文庫から出した「 エイズ治療薬を発見した男 満屋裕明 」という本である。5年前の本なので書棚にはないだろうと思っていた。文春文庫のコーナーにいき、アルファベット順に並んだ著者の名前を追う。は・ひ・ふ・へ・・・ほ。

「あった」。心の中に小さな笑顔がデキタ。本を手にとる。いままたその本を読むことはないが、そっと表紙のタイトル部分を人差し指でなぞった。

満屋先生は今年もノーベル賞生理医学賞の候補の1人に挙がっていたのだろうと思う。だが今年の受賞者は、C型肝炎ウイルスを発見した3人の研究者だった。受賞式の2カ月ほど前、NHKの記者が私のところに電話をかけてきて、「満屋先生がノーベル賞をとった時はコメントをください」と言ってきた。

私はほのかな期待を抱きながら待ったが、来年以降という結果になった。結果発表から何日かたったあと、満屋先生と電話で話をする機会があった。先生は相変わらずイチ研究者として、いまは新型コロナウイルスの治療薬開発に邁進されていた。

受賞に関心がないはずはないと思うが、ほとんど眼中に入れずにいまでも一人の医師として、研究者として研究に力を注いでいる先生の顔が浮かぶと、眼の奥がギューーと熱くなった。こういう方にこそノーベル賞を受賞してほしいとあらためて思った。

資金繰り悪化でトランプ大統領、激戦区放棄か

「すでに勝負あった」と思えることが、ドナルド・トランプ大統領の選挙対策本部で起きていた。

新型コロナウイルスに感染していたトランプ氏は12日、陰性になったことを公表し、フロリダ州を皮切りに激戦州で選挙活動を活発化させている。ところが、トランプ選対本部内ではすでに「捨て始めた州」が出ていたのだ。

「捨て始めた州」というのは「勝てないと見切った州」であり、オハイオ、アイオワ、そしてニューハンプシャーの3州が挙げられる。なぜ見切ったことが分かったかといえば、ロサンゼルス・タイムズ紙ほかの米メディアが、トランプ陣営が3州でテレビ・ラジオ広告の放映を打ち切ったことを報じたからである。

3州の中でも特にオハイオ州は大統領選挙では重要で、過去50年以上、「オハイオ州を奪った者が勝つ」とのジンクスが生きてきた州なのである。前回(2016年)選挙でもトランプ氏が奪っている(続きは・・・資金繰り悪化でトランプ大統領が激戦区を放棄か)。

Media appearance

明日の放送メディア出演予定:

・10月14日(水)出演は正午からの予定 テレビ朝日『ワイド!スクランブル

大統領選の投票日(11月3日)まで残り3週間を切りました。トランプ氏は「コロナ陰性」を自慢するように、フロリダ州オーランドに飛んで遊説を行っています。このあたりのことを含め、今後の選挙戦について語ります。

焦りはじめたトランプ:2020年大統領選(47)

新型コロナウイルスに感染したトランプ氏が焦りだしている。

すでに「免疫を獲得して、他者を感染させることはない」とツイッターでつぶやいたが、いまだに陰性になったという報道はない。そんな中、本人はほぼ1週間、遊説活動ができなかったことでかなり焦りを感じているようだ。バイデン氏との支持率の差も開いてきている。

トランプ氏は12日から遊説活動を再開させ、11月3日の投票日までほぼ休みなしで全米を飛び回りたいと選対本部に告げているようだが、スティーピエン選対本部長もコロナに感染しており、同氏がどれほど動けるかは判断できない。同本部長はツイッターでのつぶやきが少ないので、あと3週間、トランプ氏をどう動かすのか。

ただトランプ氏本人は本気で毎日動き回るつもりでいるとの情報が入っている。周囲は「自殺行為だな」と言っているという。コロナ感染後、大統領は米時間12日にフロリダ州オーランド市郊外で遊説をスタートさせ、翌13日にはペンシルベニア州、14日にはアイオワ州に飛ぶ予定だ。

大統領の周囲にさらなる感染者が増えないことを祈るだけである。

草なぎ剛あらわる

10月9日正午、映画『ミッドナイト・スワン』に主演した草なぎ剛氏が外国特派員協会の記者会見に現れた。

会見室に入ってきた時から魂をどこかに置き忘れてきたような、浮かない表情をしていたが、質疑応答になるとハキハキとした受け応えに変わった。

公開中の映画ではトランスジェンダーの役をこなしており、出演依頼を受けた時から「むずかしい役だとは思ったが、役柄から暖かさを感じたし、すぐに撮影に入りたいと思っていた」と述べ、脚本を読んだあとの感想をこう漏らした。

「 脚本を読んだ時に泣きました。 その脚本がもっているエネルギーを役に乗せることが大事だと思っていた」

しっかりした口調でそう言うと、一瞬、彼の目に魂が宿ったような気がした。映画は9月25日から全国公開中である。