米朝はどれだけ真剣か

6月12日の米朝首脳会談が取りやめになったと思ったら、すぐにトランプらしい心変わりで会談実現の流れが戻ってきた。

トランプと金正恩は世界でいま、もっとも嫌われている首脳といって差し支えないと思う。だが両氏が直接顔を合わせれば、意気投合する可能性があり、平和条約から国交樹立へ進んでいく道もないことはない。

朝鮮中央通信は27日、金正恩が文在寅と会談した後、「歴史的な朝米首脳会談に対する確固たる意志を披れきした」と記しており、少なくとも金正恩はトランプとの会談に前向きであることがわかる。

実はトランプと金正恩はこの点でブレていない。

それよりも両国高官のなかで、会談に懐疑的な人物がおり、彼らが両首脳の考え方に影響を与えているとみられる。北朝鮮では第1外務次官の金桂冠(キム・ケグァン)であり、アメリカ側は国家安全保障担当補佐官のジョン・ボルトンである。

両氏は10年以上前から互いを知っており、罵りあうことさえある。しかし、トランプと金正恩がトップとしての意思を示し、会談に前向きであれば6月12日は歴史的な日になりうる。

もちろん、「非核化」の定義が両国で違うため、政府高官による妥結点の探り合いが難しいが、トップが同じ方向を向いた以上、政府高官たちはすり合わせをしなくてはいけない。

しかし、当欄で過去何度も述べている通り、金正恩が所有している核兵器をすべて廃棄するとは考えにくい。この点で、本当の意味での「非核化」は実現できないだろう。(敬称略)